終末期を支えるために宗教者ができること 普門メディアセンターでビハーラ講座

「生・老・病・死」の四苦の解決を目指した仏教。今、その教えを生かし、医療や社会福祉の分野と関わる「ビハーラ活動」の取り組みが行われている。

6月16日、NPO法人「ビハーラ21」の三浦紀夫理事・事務局長(真宗大谷派僧侶)を講師に、立正佼成会の普門メディアセンター(東京・杉並区)で「ビハーラ講座」が開催された。テーマは『施設での看取りと医療チャプレンの活用――バーンアウト防止を願ったグリーフケア』。医療関係者や仏教者11人が参加した。

「ビハーラ」とはサンスクリット語で「僧院」「身心の安らぎ」「休息の場」の意。現在は仏教者による医療や福祉のケアに用いられている。

ビハーラ21の三浦理事は真宗大谷派僧侶でもある

講座では、三浦氏が、高齢者や障害者施設の運営などの福祉事業を展開し、「医療」「介護」「仏教」の連携を目指すビハーラ21の活動を紹介した。この中で、力を入れている活動の一つとして福祉施設の職員の育成について言及。職員が「死」を自らの問題として捉え、「人間は生まれたら必ず死ぬ」という事実を学ぶようにしていると話した。

その背景として、三浦氏は、現代では医療が進み、寿命が延びたことで家族との死別を経験したことのない若い職員や、大半の人が病院で亡くなる社会にあって「死」を身近に感じられない職員が多いからだと説明する。利用者が亡くなると、その死を受けとめきれず、「何もできなかった」と自らを責めてしまい、職員がバーンアウト(燃え尽き症候群)になることを防ぐためでもある。

また、身近な人を亡くし、悲嘆に暮れる遺族を支えるグリーフケア(悲嘆のケア)に触れ、福祉施設の職員だけでは遺族の悲しみに十分に対応できないという現場の声を紹介。現実に米国では、終末期の患者や遺族のニーズに応える宗教者として「チャプレン」が病院に勤務し、グリーフケアに当たっていることを挙げ、死の問題に関わってきた宗教者が医療や介護の手助けになると強調し、日本でも取り組みを進める必要があると訴えた。

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