急増する難民をどう守るか フランスの取り組みを視察して――JARの石川代表理事による報告会

このほか、難民や難民認定申請者のセーフティーネットについても、フランスでは在留資格の有無にかかわらず、あらゆる人の医療や住居などの生活面での費用を国が負担し、その支給手続きはNGOが行う体制が充実していると報告。日本は政府による生活支援の体制が乏しく、民間団体の支援によって最低限の生活を送ることができているのが現状と話した。その上で、「難民や移民への支援を“国の責務”として行い、より良い仕組みづくりを民間と協力して目指すフランスの姿勢に、日本で難民支援を行うNGOとして理想的なものを見ることができた」と述べた。

さらに、難民条約の規定や人道上の観点から、日本政府も先進的な取り組みを行っている国の仕組みを参考にし、国際社会の一員として良いものは積極的に導入していくべきであるとの考えを示した。「東京オリンピックを控え、海外から日本を訪れる人が増えている昨今、日本で難民認定を申請する外国人も急増しています。真に支援が必要な人には積極的に手を差し伸べる体制づくりを整えることは、“待ったなし”の状況」と訴えた。

こうした内容を踏まえ、石川氏は、フランスの難民支援制度が難民を受け入れ始めた当初からあったわけではなく、国会での議論や関連法案の修正、NGOによる政策提言や国に制度変更を求める訴訟などを経て、徐々に形作られてきたと説明。その根底には、難民や移民の人権を尊重し、適正な認定手続きが保障されなくてはならないというフランスの人々の意思があるとつけ加えた。

「市民が難民のことを知ろうとする意思が結集されることで世論が形成され、国や制度をより良いものに変える原動力になります。私たち日本人もフランスの難民支援制度を好例として学び、一人ひとりが受け入れの意思を持って難民問題に関わり続けていくことで、日本の制度も変えられる可能性がある」と述べた。その上で、日本にいる難民が安心して暮らせるよう支える努力を続けると同時に、彼らと共に生きる社会の実現を目指していきたいと語った。

この後、石川氏と、フランスの移民の社会統合などが専門の森千香子・一橋大学大学院准教授によるディスカッションが行われた。この中で、森氏は、日本で難民への理解が進むためには、NGOが難民に対する法的支援や生活サポート支援、政策提言の成果を社会に伝えるだけでなく、移民や難民を題材とした映画や文学作品が増えるような働き掛けも必要と強調。社会的関心を高める取り組みについて意見が交わされた。

森一橋大学大学院准教授(左)と石川JAR代表理事によるディスカッション