急増する難民をどう守るか フランスの取り組みを視察して――JARの石川代表理事による報告会
6月20日は、国連で定められた「世界難民の日」。19日に発表された国連の報告によると、紛争などが原因で発生した世界の難民は5年連続で増えており、2017年末で過去最高の6850万人に上る。急増する難民への対応、さらにその背景にある紛争や政治的な迫害、経済的格差などが国際的な問題になっている。
「世界難民の日」の翌21日、認定NPO法人「難民支援協会」(JAR)によるシンポジウム(共催・在日フランス大使館)が東京・新宿区のアンスティチュ・フランセ東京で開催された。フランス外務省の招聘(しょうへい)により、今年3月に同国を訪れて難民受け入れの状況を視察したJARの石川えり代表理事がその内容を報告。市民約80人が参加した。
フランスは昨年、約2万3000人の難民を受け入れた。一方、シリア危機以降、欧州には大勢の難民が押し寄せ、現在、欧州の一部の国では受け入れを拒否する動きが広がっている。日本は、17年の難民認定申請者が1万9628人で、そのうち認定者は20人と、他の先進国に比べて依然として少ない。
当日は、在日フランス大使館のニコラ・ベルジュレ政務参事官による開会あいさつに続いて石川氏が報告に立った。石川氏は、難民に関わるフランス政府の担当者や国会議員、研究者、NGO職員らにヒアリングを行った結果、「難民認定の適正な手続き」「難民申請中のセーフティーネット」の二点が、今後の日本の難民支援制度を考える上で「参考になる」と強調した。
このうち、認定手続きについては、日本では法務省の部局である入国管理局が実務を担っており、その時々の政権の意向が強く働く傾向にあること、加えて人道的な「難民の保護」より「入国の管理」が優先されやすいことの二点を、審査上の問題として挙げた。これに対し、フランスでは、政府から完全に独立した審査機関である「フランス難民及び無国籍保護局」(OFPRA)が認定を行うことや、不認定とされた後、難民専門の行政裁判所で再審議を受ける際に公費で選任された弁護士のサポートを受けられる点が日本とは異なると指摘した。
また、在留資格を与えられていない難民認定申請者の施設への収容について、人権の観点から、フランスでは収容期間が上限45日に定められていると紹介。収容が無期限で、医療体制の不備や長期間にわたる拘束による精神疾患で自殺者が出るなど、大きな社会問題になっている日本の現状を詳述した。
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