経典の翻訳から見えてくるものは 米、英、日の研究者が参加し第23回法華経国際会議

法華経研究の発展を目的とした「第23回法華経国際会議」が6月13日から16日まで、立正佼成会の大聖ホール(東京・杉並区)などで開催された。米国、英国、日本の3カ国から大学教授ら研究者11人が参加。本会国際アドバイザーのドミニック・スケランジェロ博士がコーディネーターを務めた。

今回のテーマは『翻訳の中から見えるもの――法華経の移り変わり』で、各参加者は経典の翻訳そのものから、翻訳に伴って、宗教儀礼や仏教芸術・文化に与えた影響に至るものまで多岐にわたる研究成果を発表した。

英カンタベリー・クライスト・チャーチ大学のビー・シェアラー教授は、『法華経を社会貢献活動に移すために――解釈と社会参加の教学』と題して発表。法華経の一節に身体障害者への差別的な表現があるという一部の指摘に対し、法華経は現代に即した再解釈が可能で、社会参加を促す菩薩行を重視する立場からの現代的解釈について論じた。

また、米ニューヨーク州立大学オールバニ校で法華経の翻訳の授業を担当するアーロン・プロフィット准教授は授業の中で、法華経を学生全員で音読することから始め、法華経が編纂(へんさん)された当時の状況や時代ごとの解釈の変化に重点を置いて指導しているとした上で、学生の反応や理解について詳述。北米の学生にとって救済の場面や菩薩の姿は翻訳しやすいのに対し、女性の立場と役割、宗教的多様性についての理解は難しいとし、背景にある文化の違いなどを考察した。

参加者は研究成果を基に議論を深めた

本会から参加した庭野統弘学林学長は、『法華経の平等思想について――鳩摩羅什(くまらじゅう)の法華経訳と法華経行者への影響』について論考した。明治時代末期から大正時代にかけて活躍した宗教思想家・西田無学の法華経解釈に基づく新たな先祖供養や先祖への法名(戒名)などに注目し、西田に影響を与えた鳩摩羅什訳の法華経を分析した。

一行は14日、東京・葛飾区の帝釈天題経寺に参詣。15日には本会杉並教会の「布薩(ふさつ)の日」式典に参加した。

天台宗の専門家で、米バージニア大学名誉教授のポール・グルーナー博士は、「多方面から法華経を学ぶことができました。文献として読むことと実生活への生かし方はかなり違いますから、法座に参加し、説法を聴けたことで、法華経の役割について理解を深められました」と感想を語った。

スケランジェロ博士は、「法華経はイメージ描写や比喩が多く、真実を芸術的に描くお経なので、さまざまな解釈ができます。法華経の魅力を知ってもらい、会議自体が法華経の広宣流布につながることを願います」と語った。