教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」 臓器移植に関する生命倫理

講演では、米国における医療者の生命倫理の成立と内容についても言及。「個人の自律的選択の尊重」「危害を加えてはならない」「積極的に有益な行為をする」「正義、公正な扱い、医療資源の配分」の4原則からなる米国の生命倫理では、「生命は神聖にして不可侵」という宗教的信念と、高度に発達した医療技術との間に生じたギャップを埋めるため、「非宗教化」が図られてきたと解説した。

一方、「生死」に直接関わる医療は、個人の苦悩や痛み、喪失体験などを伴い、単一の倫理観が全ての人々に当てはまるものではないとの考えを説明。米国では、さまざまなケースに対応できる多元性を認める生命倫理が研究されてきたとも話した。

さらに、藤枝氏は、日本にも米国流の生命倫理が根を下ろしているとの認識を表明。今後、臓器移植の議論を深めていくための取り組みについて、宗教者には「中立的な生命倫理を意識しながらも、自教団の宗教的な言説の豊かさを失うことなく声明を発信していくことが、それぞれの教団に求められている」と語った。

この後、質疑応答が行われた。