宗教と宗教学の公共性を討議 庭野平和財団が公開シンポジウム

天理大学おやさと研究所の金子昭教授

一方、『教団宗教は公共の場にどう立ち得るか――世界最大の仏教NGO慈済会を事例に』をテーマに発表した金子氏は、公共的な宗教活動の事例として、財団法人・台湾仏教慈済慈善事業基金会を挙げ、ボランティア活動を「菩薩行」と捉え、災害現場などに赴くことが人々を救う布教活動と連動していることを紹介。こうした活動によって教勢が伸びているが、その背景に、入会しても、それまでの宗教から改宗する必要はなく、二つの宗教を同時に信仰できる“超宗教”教団としての特徴も大きいと述べた。

その上で、今後、日本の宗教に求められる点として、「教団と社会との間で活動がかみ合っているか」「社会活動と信仰活動とが橋渡しされているか」を挙げ、各教団が教えを再解釈し、社会に合った実践のあり方を考えていく必要があると語った。

この後、金光教国際センターの河井信吉所長を加え、オープン・ディスカッションが行われた。上智大学の村上辰雄准教授が司会を務めた。

参加者からの「宗教が本質的に開かれていくには」との質問に対し、河井氏が、宗教には、たくましい人間の生き方や知恵が蓄積されていると説明。現代は、それが失われつつあるとし、それぞれの主体性や自立性を育み、苦しみと向き合うための宗教の知恵を大切にして活動していくべきと回答した。

また、宮本氏は、宗教の公共性を考える上で、「社会や人々のニーズにどう応えられるか」が議論の的になるとし、「ニーズに応えるだけでは、宗教本来の力は出しきれない。むしろ、一般の人々が気づいていないニーズにまで気づかせることが宗教の使命であり、そこで初めて宗教の公共性が見えてくる」と結んだ。