アラブ地域の平和的共存に向けKAICIIDがハイレベル会合 光祥次代会長がスピーチ
光祥次代会長のスピーチ
私たちの目の前には、さまざまな問題が複雑に絡み合い、どうすることもできないような現実があります。答えは簡単には出せません。けれど、大切なことが一つあります。それは「世界の負」を「自分事」と捉えることです。
モーゼは十戒で「殺してはいけない」とし、ブッダは「欲望の制御」を説きました。なぜなら、彼らは私たち人間の根源に潜んでいる暴力性を知っていたからです。
人間の本質とは、利己的な暴力と利他的な思いやりの両方が同居する「弱さ」なのではないかと私は思います。私たちの歴史は、この「弱さ」を源にした暴力にあふれています。けれど私は人間を信じたいと思います。なぜなら、根源の「弱さ」を制御し、歴史に挑戦をした多くの人々がいたからです。
私たちの世界には、身に覚えのない試練やいわれのない不平等、矛盾に苦しみ続ける「報われない者たち」が絶えることなく存在し続けてきました。戦争や暴力、革命が立ち上がってくる裏側には、必ずこうした人々の叫びが隠されています。この事実から目をそらすことはできません。
多様性とは豊かさであると同時に、複雑さです。私たちはこの複雑さに耐えて生きていかなければなりません。暴力は「向こう側」や「テロリストの側」にのみあるのではありません。私の中にもあるのです。この自覚に立ってこそ、対話のプラットフォームという新しいシステムの存在価値が発揮されるはずです。
私たちはこれまで、何百年何千年もの間、宗教が違おうとお互いを尊重して隣人としてこの地球で共生してきました。そこには長年機能してきたシステムがあったはずです。けれどそれが破綻するのを私たちは目撃しつつあります。もちろん全てが間違っていたわけではありません。多様で複雑なものに最適化を起こすことがシステムの目的ですから、システムの要素を入れ替え、境界線を動かすことで、新しいシステムが動き出すはずです。変えられないと思い込んでいたことも、動かせるかもしれません。
対立していると思い込んでいた相手と対話をしましょう。協力できないと思い込んでいた人々と、共に祈り、行動しましょう。対話のプラットフォームを最大限に活用し、共に歩み出しましょう。宗教者も、政治指導者も、自らが愛を実践する最初の一人となることで、世界に、人の心に灯をともしていきましょう。それが神仏の願いであると私は信じています。