『日本の格差対策への提言』と題して オックスファム・ジャパンが公開シンポジウム

続いて、井手氏に加え、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事長の大西連氏、経済ジャーナリストの治部れんげ氏が登壇。オックスファム・ジャパン事務局次長の森下麻衣子氏を進行役にパネルディスカッションが行われた。

この中で、「生活保護を受ける権利があっても利用せず、生活保護費を下回る月収で働いて貧困に陥っている現状がある」「男性の育児休暇の取得率が極めて低い」「長時間労働が蔓延(まんえん)している」といった問題が話題に上がった。

法律はあるものの、周囲の目や世間のプレッシャーがあるため、制度が機能していない日本社会の現状について大西氏は、公的な生活支援を利用する際、「制度はあるけれども使いづらい、使わない方が望ましいというバイアス(先入観)が(生活困窮者に)かかっていることは、非常に大きな課題」と話した。さらに、失業給付や年金、社会保険は基本的に労働や家族に紐(ひも)付けられて設計されているため、こうした基盤のない無業者や家族から孤立した人などは、給付から排除されるといった設計上の問題にも言及した。

一方、井手氏は、与党が昨年、消費増税分の使途として就学前教育の無償化を示したことに触れ、「成長して所得を増やし、貯蓄して自己責任で将来に備えるというモデルが破綻し、負担を分かち合いながら人々の生活を保障していく方向へと自民党も舵(かじ)を切った」との見解を示した。その上で、北欧諸国を例に「比例的な課税と普遍的な給付でも格差は是正できる」と強調。“困っている人をつくらない社会”の実現に向け、税を負担する側、保障を受ける側という分断をつくらないために、「中高所得層を含めたあらゆる人々の生活保障をする。所得額で扱いを区別しないことによって、むしろ結果的に格差の是正が可能な状況がつくられていくことが重要」と語った。