『日本の格差対策への提言』と題して オックスファム・ジャパンが公開シンポジウム

国際協力NGO「オックスファム・ジャパン」による公開シンポジウム「日本の格差対策への提言――格差縮小コミットメント指数から見た世界の取り組みとの比較から」が1月27日、慶應義塾大学(東京・港区)で行われた。市民45人が参加した。

近年、世界では全体の富が増えている一方、貧富の格差が広がり、それが犯罪や社会不安、経済成長の減速などを招いている。特に最貧困層への影響は大きい。オックスファムでは毎年、世界の格差の状況を調査。昨年、開発金融インターナショナル(DFI)と共同で、格差縮小の取り組みに対して各国政府をランク付けするための「格差縮小コミットメント指数」(CRI指数)を開発し、結果を公表した。

評価の基準は、「財政支出」「税制」「労働政策」の3点。「財政支出」では、国家予算に占める教育・保健・医療分野への支出の割合、「税制」では累進課税の実施状況、「労働政策」は、法律で定められた最低賃金の値や女性労働者に対する公的保護の有無などの21項目を数値化し、各国で比較した。

昨年7月に発表されたランキングでは、対象152カ国のうち、福祉国家として知られるスウェーデンが総合1位。2位ベルギー、3位デンマーク、4位ノルウェー、5位ドイツと続く。日本は、総合順位で11位で、内訳は、労働政策が4位、財政支出が7位、税制は43位になった。東アジア・大洋州地域では1位となっている。

基調講演に立つ井手慶應大学教授

当日はこの結果を踏まえ、同大学経済学部教授の井手英策氏が『日本の格差――現状と政策の特徴、そして今後へむけての提言』をテーマに基調講演。井手氏は、世界経済フォーラムの報告書(2017年)で、男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」が日本は、世界144カ国中114位、「労働賃金の男女差」も100位以下だったことに触れながら、政府の労働政策に関して、CRI指数と他の国際指標に大きな差異がある点に言及。日本について、「法整備が進んでいるという意味では4位という評価は正しいが、その法律が十分機能していないことが問題」と、評価のあり方を検討していく必要性を挙げた。

さらに、日本の税制度では、現役世代から高齢者への大規模な所得の再分配が行われ、格差是正の効果が高齢者に偏っていると指摘した。加えて、「貧しい人」や「高齢者」など、給付の対象を限定する社会保障のあり方は、人々を税を負担する側と保障を受ける側に分断し、現在のように平均所得が漸減している状況では、負担者の反発を招くと解説。納税の意識を低下させ、「困っている人を助けようとする善意がむしろ格差の原因につながる」と話した。

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