ユニセフ 世界子供白書2017発表会 テーマは『デジタル世界の子どもたち』

トークセッション第1部では、インターネットのリスクや恩恵について意見が交わされた

「ユニセフ『世界子供白書2017』発表会」が昨年12月13日、東京・品川区のユニセフハウスで行われた。ユニセフが1980年から毎年発行している「世界子供白書」は、世界の子どもたちの現状を紹介するユニセフ基幹刊行物。毎号、特定のテーマを掲げ、子どもたちが置かれている状況や改善の重要性を訴えている。

今号のテーマは、『デジタル世界の子どもたち』。発表会では、日本ユニセフ協会・東郷良尚副会長、警察庁生活安全局・山下史雄局長のあいさつに続き、ユニセフのアンソニー・レーク事務局長が、「世界子供白書2017」についてスピーチした。

白書では、子どもたちはインターネットを活発に利用しているものの、そのリスクを判断する「デジタル・リテラシー」に乏しく、同時に、大人が子どものインターネット活用状況を把握していないために、子どもへの被害が拡大していると示された。

アンソニー・レーク事務局長

当日、登壇したレーク氏は冒頭、デジタル社会において、情報通信技術(ICT)がもたらすリスクと恩恵を認識し、子どもたちへの危害を防止しつつ、恩恵を最大化することが課題と指摘。「子どもの生活や未来に、デジタル技術が大きな影響力を及ぼしている中、課題の達成には、インターネットを利用している子どもの観点、意見を反映させて取り組んでいくことが重要」と訴えた。

この後、2部に分かれて、トークセッションが行われた。第1部では、兵庫県立大学の竹内和雄准教授、同大学ソーシャルメディア研究会の学生6人、レーク氏が登壇し、『子どもたちはデジタル世界をどう生きているのか――リスクと機会』をテーマに、意見が交わされた。ソーシャルメディア研究会は、小中高生向けに、インターネットやスマートフォンの利用モラルを伝える講座「スマホサミット」を開催している。

学生たちは、「パパ活」と呼ばれる、男性と会話や食事を共にするだけで収入が得られるという書き込みを見て、安易に信じて被害を受ける子どもたちが少なくないなど、インターネットによるさまざまな危険性を説明した。大人には、子どものスマートフォンの長時間利用や、ニュースで取り上げられるインターネットを悪用した事件の情報だけで、インターネットを「悪いもの」だと判断することは避けてほしいと主張。勉強や情報収集のツールとしての活用、趣味の合う人との交流の場、友人との連絡手段など、子どもにとってインターネットはもはや必要不可欠なものとなっており、良い点にも目を向け、大人がその利用について理解を深めることが必要と強調した。

これに対し、レーク氏は、「私が子どもの頃に親に『漫画は読んではいけない』と言われても、隠れて読んでいたように、子どもがしたいと思うものに関して、親が一方的に制限することは難しい。ましてや、インターネットに関する知識は子どもの方が勝っている。若者たち自身が、インターネットの危険性を理解し、自分を守るようにしなくてはならない」と語った。

第2部のテーマは、『ネット上の子どもの保護とさらなる可能性――ICT企業の挑戦』。ヤフー株式会社の別所直哉執行役員、株式会社ディー・エヌ・エーの西雅彦・デライトドライブ・カスタマーサービス部部長、ソフトバンク株式会社の齊藤剛・CSR総括部CSR部部長が登壇した。

3社の代表は、ユーザー同士がコンタクトを取ることによって、犯罪への加担や被害防止、また外国の都市部から離れた遠隔地に暮らす、学習の機会が乏しい子どもへのインターネットを通じた教育の支援など、各社のICTの社会貢献事業に関する取り組みを説明した。

※CSR=企業の社会的責任