「自殺」を考えるをテーマに、本会職員対象の人権啓発講座

講演に立つライフリンクの清水代表

清水氏は、自殺者の遺族への聞き取り調査から、自ら命を絶つまでに、平均四種の問題を抱えており、家族の不和、職場での人間関係の悪化や配置転換、生活苦、病苦など、普段起こり得る事柄が複合的に連鎖して、死へと追い込まれていくと解説した。また、自殺者の約70%は、そうした問題を解決しようと、専門家に相談を試みているが、このうち44%が亡くなる1カ月以内に行っていると指摘。介護、貧困、過労、虐待などの問題の解決に携わる行政の職員が、それぞれの領域を限定的にケアするのではなく、複合的に連携して問題解決にあたることで、自殺対策だけでなく、生きるための包括的な支援が充実すると強調した。

さらに、今年4月、施行から10年を迎えた「自殺対策基本法」が改正され、これまで国にのみ義務付けられていた自殺対策の計画策定が、より身近な行政を担う都道府県や市町村にも義務付けられた意義を詳述。「誰もが万能ではありませんが、無力でもありません。専門家という点と点をつないで線をつくり、目の細かなセーフティーネットを構築することが、生き心地のよい社会づくりにつながるのです」と提案した。

なお、会場内には、自死者の生前の人柄や死に至る経緯を遺族から聞き取り、その証言を元にライフリンクがまとめたパネル「自死者のメッセージ――遺族語る」が展示された。