『現代社会とパラダイムの転換』テーマに 庭野平和財団がGNHシンポジウム

「幸せに働いて、幸せに暮らす」生き方が難しくなった中で

基調発題に立つ内山氏

この中で内山氏は、自然エネルギーを活用した地域おこしや、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネス、都市と農山村に暮らす人々の交流といった取り組みが日本各地で活発化している状況を紹介。こうした動きは、“昔ながらの日本人の生活”を取り戻そうとする伝統回帰の傾向の一つだと説明した。ただし、単に「昔に戻る」ということではなく、働き方や生活、地域のあり方の変化に適応した形で進んでいると指摘した。

さらに、伝統回帰が進み始めている背景を詳述。戦後、企業や組織が拡大し続けるとともに、人々は学歴や出世のための競争に追われるようになり、「幸せに働いて、幸せに暮らす」生き方が難しい時代となった点を挙げ、こうした現状に疑問を持つ人が徐々に増えているためと語った。

その上で、幸せとは、家族や周囲の人々、自然、地域の歴史との関係性の中で育まれるものと解説。「幸せを感じられる関係を、これからどうつくっていくかに、人々が関心を持つ時代になってきた。関係のあり方、ネットワークのつくり方はさまざまだが、大きな転換が今求められている」と問題提起した。

基調発題に続いて、『島のこしが島おこし』を活動理念に掲げ、沖縄・伊是名島の活性化に取り組む納戸氏が、古民家を改修し、宿泊施設として活用する「古民家再生プロジェクト」を紹介。観光を産業化するのではなく、「美しい島」を守り続けること、島民が受け継いできた伝統的な暮らしを存続させることに主眼を置き、ソーシャルビジネスとして事業に取り組んでいると語った。

一方、細金氏は、2004年に発生した新潟県中越地震を機に、新潟・小千谷市の若栃に発足した「わかとち未来会議」の活動を報告。地産品を販売する農業法人を設立したほか、被災経験を生かし、東日本大震災で被災した福島・南相馬市の市民を一般家庭で受け入れたことなどを示し、事例を基に住民と共に進める地域おこしのあり方を提言した。

この後、内山氏を進行役に鼎談(ていだん)が行われ、地域性を生かしたつながりの魅力や観光のあり方、便利さの弊害、移住者への対応の心構えなどについて意見が交わされた。