国際識字デーイベント 読み書きの習得が、生きる力に

全ての人のより良き人生のために、学ぶ機会の保障を

レー氏は、中学1年生の時に来日。スピーチでは、当時、外国出身の生徒の受け入れ体制が学校に整っていなかったため、教師や友達の言葉が分からず、学校生活がしばらく苦痛だった体験を述懐した。

しかし、その後、教師に紹介され、外国にルーツを持つ子供の学習を支援するNPO法人「みんなのおうち」のサポートを受けたほか、学校の計らいによって放課後にベトナム語に精通する講師を招いて特別授業が行われたことで、日本語を習得することができた経緯を紹介。在日外国人の日本語習得の難しさに触れながら、支援の重要性を語った。

続いて、スグゥオン氏が登壇した。

カンボジアでは、貧困や親の教育に対する理解不足により、教育の機会が奪われ、初等教育の中途退学者が多い。日本ユネスコ協会連盟では、子供だけでなく、読み書きができない大人に学ぶ機会を提供する「世界寺子屋運動」を展開しており、スグゥオン氏は小学校を中退した後、29歳の時に寺子屋で学んだ経験を発表。読み書きを習得したことで、図書館勤務を果たし、現在は幼稚園に勤めていると語った。また、貯蓄や農業の知識を学ぶことができ、村人たちへの農業指導を行っていると述べた。

二人の発表を受けて、上智大学の丸山英樹准教授が、世界の識字問題についてコメントした。この中で、2000年に国連でミレニアム開発目標(MDGs)が採択されたことによって、開発途上国で小学校が普及し、初等教育は改善傾向にあるが、それまでに教育を受けることができなかった大人への教育が課題と指摘した。

そのため、紛争や戦争、貧困で教育機会を失った人にとって、寺子屋は「セカンドチャンス」と呼ばれ、大人になってからでも学ぶ機会を保障する仕組みとして役立っている現状を紹介。「学ぶとは、生きること。読み書きができ、計算ができることで、それぞれが人生を選び取り、作り上げていくことができる」と語った。