TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトクラリネット・瀧本千晶さん Vol.3
憧れの楽団の一員として
――入団後、TKWOの団員たちと触れ合って感じたことは?
入団前は、これだけ多くの大人が集まっている楽団なら、一人は、「この人怖いな、嫌だな」という人がいてもおかしくないと覚悟していたのですが(笑)。先輩方は皆、優しく、すれ違えば声を掛けてくださるし、リハーサルの休憩中には自然と会話が始まるようなアットホームな雰囲気です。実際に入団して、とても素敵だと感じました。でも、ステージに立った瞬間、一気に集中力を高めて、ベストの演奏を披露する。それでいて、演奏会が終われば、速やかに家路につく。その颯爽(さっそう)とした姿が格好良く、団員が集った時やリハーサルの合間の和やかな雰囲気と、本番に臨む姿勢と、演奏後のライフスタイルを大切にする感じとのギャップが、新入団員の私の目にはとても魅力的に映りました。憧れの存在に近づいたら、裏の部分を知ってげんなりするということもあるようですが、私の場合は、入団したら、もっと楽団のことが好きになったというのが正直な気持ちです。この恵まれた環境の中で、自分も成長し、今以上にお客さまに喜んで頂けるステージをつくりあげたいと思います。
――今年6月の宇都宮公演は、団員として初めての地元凱旋(がいせん)になりました
佼成ウインドの宇都宮公演は、今回で4回を数えます。1回目は行けなかったのですが、2回目は観客として聴き、3回目はエキストラとして演奏に参加しました。今回は、ソロを吹く機会まで頂きました。家族やお世話になった吹奏楽部の顧問の先生、地元の友人たちも来てくれたので、これまで自分を支えてくれた皆さんへの感謝の思いを持って臨みました。
会場の宇都宮市文化会館は、幼い頃から親しんできたホールです。初めてステージに立ったのは、クラリネットを始めて間もない小学2年生の時で、それ以降も、コンクールなどで何度も演奏しました。私の青春の思い出が詰まった大切な場所で、当時憧れていた佼成ウインドの一員としてステージに登っていることが不思議で、演奏中は学生当時のことが思い出されて、胸が熱くなりました。
――最後に、吹奏楽部の学生に向けてメッセージを
私は中学、高校時代を振り返ると、憧れの存在に少しでも近づきたいという思いが原動力となり、練習を頑張ることができたと思っています。中学の吹奏楽部では、隣で演奏していた先輩の音色がとても魅力的に感じられましたし、小倉先生のCDを聴いてからは、こんなすてきな音色を奏でるにはどうすればいいかを考えるようになりました。いわば、「憧れ」が、具体的な目標を立てる助けになったのです。目標を立てないまま、やみくもに練習するのは、目的もなく走ることに似ているようで、うまくできない時などに気持ちが続かなくなってしまうことが多い気がします。ですから、練習と同時に、「この音、良いなあ」「こんな演奏がしてみたい」といった「憧れ」を見つけてみましょう。憧れがあると、目標がはっきりしてきて練習が効率的になり、それによって演奏も上達していくと思うのです。
プロフィル
たきもと・ちあき 栃木・宇都宮市に生まれる。2017年に小澤征爾音楽塾オーケストラに参加。第37回ヤマハ新人演奏会に出演した。これまでにクラリネットを小倉清澄、伊藤圭両氏に師事。作新学院高等学校を経て、東京藝術大学を卒業した。