TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトクラリネット・瀧本千晶さん Vol.1
吹奏楽部で過ごした時間は青春そのもの
――音を出す喜びを感じ、クラリネットにはまっていったのですね
そうですね。ソロコンテストなどにも出場するようになって、クラリネットへの愛着が強くなっていきました。小学5年生の時には、両親が「真剣にやっているから」と認めてくれて、楽器を買ってくれました。うれしくて、楽器を吹き続けたいという気持ちがさらに高まり、中学校でも迷わず吹奏楽部に入りました。
朝練で一日が始まり、放課後も夜まで練習して、土日も練習に費やすというハードな毎日でしたが、つらいと思ったことは一度もなかったですね。毎日、大好きなクラリネットが吹けるのですから。吹奏楽部の1年間は、夏場はコンクールに向けて懸命に練習して、大会が終わったら引退する3年生の先輩たちと別れ、春になったら新たな後輩を迎えるというサイクルです。その中で毎年、〈私、目いっぱい青春を味わっている!〉との思いをかみしめながら、とても充実した日々を送りました。
現在、佼成ウインドの同僚として一緒に演奏をしている小倉清澄先生(クラリネット)の存在を知ったのもこの頃でした。同じ楽団に所属したからといって、私にとってはいつまでも「先生」ですから、「小倉先生」と言わせて頂いているのですが、話は中学2年生の時のことです。学校にリードなどの注文を取りに来てくれていた、なじみの楽器店のスタッフさんが、私たちクラリネットパートにCDをプレゼントとしてくれたことがあったのです。それが小倉先生の作品『クラリネット・パラフレーズ』でした。それまでの私は、出場したコンテストで、ゲストとして招かれたプロのクラリネット奏者の演奏を聴いたことはありましたが、プロの演奏を頻繁に聴ける環境にはなく、普段は隣で練習している先輩の音が手本でした。ですから、小倉先生のCDを聴いた時、自分が今まで耳にしたことのない、まろやかな音色に驚き、〈クラリネットでこんなにいい音が出せるんだ〉と感動しました。収録されていた曲が好みだったこともあって、すぐにiPod(アイポッド)に取り込んで、登下校中に繰り返し聴いていましたね。
――そのまま、高校でも吹奏楽部に?
はい。存分に楽器に打ち込めるのは高校の3年間が最後だと思い、地元の栃木県で吹奏楽部が盛んな、作新学院高校に進みました。毎年、全日本吹奏楽コンクールに出場しましたが、東関東大会までは進むものの、千葉県勢、神奈川県勢が強くて、全国大会には一度も出場できませんでした。それでも、みんなで祈るようにして、審査結果の発表に耳を澄ませ、泣いたり笑ったりしたことはかけがえのない思い出です。野球部の応援で、甲子園に行ったことも忘れられません。吹奏楽部とチアリーディング部で、アルプススタンドで応援するのですが、自分たちも一緒になって試合をつくっているような気がして興奮しました。選手がヒットやホームランを打った時、タイミングよく演奏しなければならないので、曲を覚えて、瞬発力を発揮して演奏するという、ステージでの演奏とは違った楽しみも味わうことができました。
プロフィル
たきもと・ちあき 栃木・宇都宮市に生まれる。2017年に小澤征爾音楽塾オーケストラに参加。第37回ヤマハ新人演奏会に出演した。これまでにクラリネットを小倉清澄、伊藤圭両氏に師事。作新学院高等学校を経て、東京藝術大学を卒業した。