TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・太田友香さん Vol.3
感動は人生の宝物
――自分の気持ちを刺激していくのが成長の秘けつなのですね。太田さんは、出身地である茨城県常陸太田市でのコンサートや楽器クリニックにも取り組んでいますが、どんな思いからですか
実は、常陸太田市の皆さんが地元出身の音楽家を熱心に応援してくれていて、コンサートや楽器クリニックを開いて私を呼んでくださるのです。私も、生まれ育った故郷に恩返しするつもりで、快く協力させて頂いています。
振り返ると、私が音楽の道を志す上での大きなきっかけは、小学生の頃、地域のお祭りのステージで中学生の演奏を聴いて感動したことでした。ありふれた一幕かもしれませんが、今考えると、そうした場をつくってくれた大人の力がなければ、私が感動することもなかったのです。決して大きくはない、身近なイベントだけれど、それが誰かの人生に大きな影響を与える可能性がある――私は身をもって体験したので、自信を持ってそう言えます。音楽に触れる機会が増えれば、その分、将来、音楽の道に進もうという人が増えることにつながりますし、もしかしたら、いつかステージでその“後輩”に出会えるかもしれません。夢のまた夢のような話ですが、もし実現したら、とてもすてきなことだと思いませんか? 大人として、そのチャンスの作り手になれるならば、喜んで協力したいと思っています。
――最後に、吹奏楽に取り組む全国の中高生に向けてメッセージを
中学、高校の吹奏楽部で仲間と一つになって演奏をつくり上げたという体験がうれしかった記憶、楽しかった記憶として今も、私の心の中に深く刻まれています。今は、最高の演奏をつくり上げようという気持ちを佼成ウインドの仲間たちと共有しながら、音楽と向き合えていることに誇りを感じていますが、その原点は間違いなく、中学、高校での吹奏楽部の思い出です。
吹奏楽部では、「コンクールで勝ち進んで全国大会に出るぞ!」「必ず金賞を取るんだ!」という気持ちがどうしても強くなります。目に見える結果ばかりに意識が向きがちになりますが、それだけではなく、仲間と共に目標に向かっていく日々の過程を大切にして、しっかりと味わってほしいですね。仲間と心を一つにして演奏することで得られた喜びや達成感は、その時しか味わうことができない貴重なものです。その経験は、年月を経ても色あせることのない人生の大きな宝物。将来、どんな道に進んでも、あなたの心の中で輝きを放ち続けるに違いありません。
プロフィル
おおた・ゆか 1985年、茨城・常陸太田市生まれ。2007年に昭和音楽大学を首席で卒業し、東京佼成ウインドオーケストラに入団した。これまでにクラリネットを笠倉里夏、関口仁、堀川豊彦、野田祐介、室内楽を太田茂の各氏に師事。第8回日本クラリネットコンクール第3位、第30回日本管打楽器コンクール クラリネット部門第2位。現在、昭和音楽大学で講師を務める。