TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・和田光世さん Vol.3
“何か”を感じる演奏を
――演奏の際、和田さんはどんなことを心がけていますか
お客さまの心に何か残ってくれたらいいなと思って演奏しています。ですから、終演後、お客さまから、声を掛けられると、私は心底、「良かった!」と感じます。わざわざ声を掛けてくださるということは、演奏を聴いて心に何かが残り、それに反応してくれたということですからね。
保育園で演奏する機会があるのですが、こちらが音を出すと、園児たちは笑ったり、驚いたりといった表情を見せてくれます。時には踊り始める子もいて、これも、彼らの心に音楽が響いたと感じられるうれしい瞬間です。
私たち演奏家は、曲と向き合い、それをどう表現するかを練りに練った上で演奏します。最大限の準備をして演奏会当日を迎え、披露するのです。その結果として、聴き手であるお客さまが何か良いものを感じ、心に残るものがあって、それを会場から持ち帰ってくださるならば、演奏家としてこれほど幸せなことはありません。
――最後に、楽器を演奏している学生たちに向けてメッセージを
学生の皆さんには、どのパートでも、自分が出す音はどんな音なのか、自分がどんな音を出したいのかを想像することを大切にしてほしいと思います。悲しい感じとか、静かな感じだとか、キラキラ輝くような印象の音色など、自分の中で音やフレーズのイメージを膨らませてください。漠然と練習していると、楽譜に記された音をただ出すだけの味気ない演奏になってしまいがちです。自分のイメージに合った音を出すために技術を磨こうとすれば、練習が効果的になり、演奏がより一層良くなります。とにかく、想像することが大事です。
この想像する力を高めるには、たくさんのことを経験するといいと思います。音楽だけでなく、スポーツをする、美しい風景を見る、映画を見るなど、自分の体験で感じたことの全てが、音のイメージを生み出す想像力の源になるのです。
私自身も、子供の頃に音楽だけでなく、運動部に入って体を動かした経験が演奏に生きていると思っています。水泳なら、プールに飛び込む水しぶきの音、スタートする前のドキドキ感、テニスなら、ボールが跳ねる音や、コートで浴びた強い日差しのギラギラ感などです。テニスのラケットを振る動きは、体を動かすという意味で、マレットやスティックの動作につながっています。イメージを膨らませば、全てが音楽につながり、音楽もまた、生活の全てにつながります。ですから、いろいろなことに挑戦してください。無駄なことは一つもありません。たくさんの経験が、演奏、そして人生を豊かなものにしてくれると思います。
プロフィル
わだ・みつよ 福岡・北九州市に生まれる。東京藝術大学音楽学部器楽科打楽器専攻を卒業後、同大学院を修了。第7回日本管打楽器コンクール、現代音楽演奏コンクール「競楽V」でそれぞれ第3位に入賞する。在学中からフリーランスの打楽器奏者として活動を始め、2018年8月にTKWOに入団。室内楽、オーケストラ、パーカッショングループなどで幅広く活動し、「東京シンフォニエッタ」「打楽器四重奏団“Shun-Ka-Shu-Toh”」「Percussion Unit“UNZRI”」のメンバーも務める。