TKWO――音楽とともにある人生♪ テューバ・近藤陽一さん Vol.3
音楽を好きであり続けるには
――そうやって入念に準備をされることが、本番でのパフォーマンスの向上につながるのですね
そうだと思っています。ほかにも、演奏会の通しのリハーサルを必ず一人で行うようにしています。本番のプログラムに従って、演奏中の休みの時間も正確に測りながら、仮に途中で失敗しても演奏をやめないで、本番さながらに吹きます。そうすることで、もし吹きバテすることがあった場合、「この小節ではあまり力を入れて吹くと後が続かないから、手前で吹き過ぎないようにしよう」といった対処法を考えられます。一人のリハーサルで、事前に対策を練ることができるのです。
私は元々、器用なタイプではないので、入念に準備することで不安を解消できますし、本番は適度な緊張感と安心感でベストなパフォーマンスを保てるのです。それでも本番で間違えることもあるので、吹奏楽の世界は奥深いですよね。どこまで上達しても常に学ぶことはあると痛感しています。
――最後に吹奏楽を志す学生にメッセージをお願いします
上達するまで根気よく練習を重ねることがとても重要です。でも、上手に吹くことだけが部活の目的になってしまうと、うまく吹けなかった時に先生から注意されたり、もっと吹けと指導を受けたりして、だんだんと心が苦しくなってしまうのではないでしょうか。恐らく、ほとんどの人は、楽器を演奏している時の自分が心地いいとか、吹いた音色を聴いてくれる人たちが笑顔になったり、感動している様子を見たりするのが好きだとか、吹くことそのものに楽しみを感じているからこそ、吹奏楽部で頑張っているのだと思います。
ですから、吹奏楽の演奏が楽しいと感じること、楽しいと感じている自分を常に意識してほしいと思います。そうやって吹奏楽や音楽を好きでいられたら、吹奏楽を引退したとしても、音楽を好きなままでいられると思うのです。そうすれば、いつかまた吹奏楽に戻り、社会人になって仕事をしながら市民楽団といった場で演奏を続けることもできます。トランペットやサックスなどは一人でポップスやジャズの曲を演奏することもできますから、純粋に喜びにつながると思うのです。とにかく、「音楽が好きだから今、部活動をしている」という自分を忘れず、大切にしてくださいね。
プロフィル
こんどう・よういち 1978年、千葉・松戸市に生まれる。2001年に国立音楽大学を首席で卒業し、卒業時に矢田部賞を受賞した。02年に東京藝術大学大学院に入学。在学中の04年に大阪市音楽団に入団し、05年3月に同大学院を修了する。同年8月、秋山和慶指揮、大阪市音楽団の演奏でA・ブログのスリーミニチュアを共演。第12回コンセール・マロニエ21金管部門で第1位に、第24回日本管打楽器コンクールで第3位に輝いた。テューバを稲川榮一、柏田良典の各氏に師事する。18年1月、東京佼成ウインドオーケストラに正式に入団した。