TKWO――音楽とともにある人生♪ バスクラリネット・有馬理絵さん Vol.3

大学院までB♭管のクラリネットを勉強し、卒業後に低音の魅力に引かれていき、佼成ウインドのバスクラリネット奏者になった有馬理絵さん。2007年に入団し、忘れられない思い出や、奏者としての苦楽について聞いた。

かけがえのない出会い

――2007年に入団されてから今日まで、一番の思い出とは

2010年のヨーロッパツアーですね。特に、スイスのルツェルン。二夜連続のコンサートで、ホールは満員でした。全ての演奏が終わった後のスタンディングオベーション、拍手喝采の光景は今でも鮮明に覚えています。音楽の本場・ヨーロッパで、アジアの楽団がこんなふうに受け入れて頂けたことに感激しました。

「人」で一番思い出深いのは、私の前任にあたるバスクラリネット奏者の木村牧麻さんですね。牧麻さんが体調を崩され、新しい人を雇いたい、ということでオーディションが行われ、私が入ってきたのです。

オーディション合格後、佼成ウインドの一員に加わると、牧麻さんは多くのことを教えてくださいました。牧麻さんに出会うまでにも、別の楽団で、長くバスクラリネットを吹かれている方と一緒に演奏することはありましたが、私はエキストラだったので、バスクラリネットについて深く教えて頂くことはあまりなく、私も踏み込んでいけずにいました。

牧麻さんは私にとって先輩であると同時に、同じ楽器を担当する初めての“同僚”という存在です。この楽団でいい演奏をしたいという気持ちはお互いに一緒で、後輩の私に手ほどきをしてくださいました。私も一生懸命学ぼうとしていました。1969年に入団されている大ベテランの先輩ですから、さまざまなことをご存じでした。舞台に立ち、その背中で示してくださることもあれば、奏法や楽器について直接教えて頂くこともありました。教えるといっても、指導のような形ではありません。牧麻さんは、優しい人柄で、口調も穏やかに、分かりやすく説明されるのです。演奏後のフォローもしてくださいました。さりげないアドバイスの中に奏者として成長できるヒントがたくさんありました。私が佼成ウインドのオーディションに合格してから半年という短い期間でしたが、その出会いはかけがえのないものでした。

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