TKWO――音楽とともにある人生♪ バスクラリネット・有馬理絵さん Vol.2

サウンドの土台をつくる低音部

――長年、B♭管のクラリネットを勉強してきて、バスクラリネットだけを担当することに葛藤はありませんでしたか

あまりありませんでした。「高音部に興味がない」というと語弊がありますが、サウンドの土台をつくる低音部は曲をつかさどるともいえ、大学院を卒業し仕事をするようになってから、その魅力に気づいたのです。それまでは、B♭管を中心に勉強していて、高音部のことしか分かっていませんでした。低音のありようで演奏の一瞬一瞬に影響を及ぼしたり、メロディーのイキイキ感が変わったりすることに一種の快感を覚えました。それに、佼成ウインドではバスクラリネット奏者として活動していますが、実は外部ではB♭管の仕事もしています。どちらにも魅力はありますし、それぞれで学んだことを双方に活かせるので、垣根をつくらずに演奏していきたいと思っています。

――“影響を及ぼす”ということは、それだけ緊張もすると思います。何か、緊張しないための本番前のルーティンはありますか

ルーティンは、イチロー選手みたいに試合前に必ずカレーを食べることはありませんが(笑)、炭水化物とチョコレートは食べるようにしています。エネルギーを使いますからね。

緊張しないためにはどうしたらいいか、と今は難しく考えてはいません。以前はシビアになり、考えれば考えるほど硬くなっていました。自分を追い込んで、結局、緊張に押しつぶされそうになっていましたね。最近は、どうでもいいことを本番前に話している方が緊張しないことが分かってきました。無理にでも、ニヤニヤというか、ガハハと笑うようにしています。どうやっても少しは緊張するので、それをあえて意識することをせず、本番前は他の楽団員と談笑しています。

※次回は8月26日の掲載予定です

プロフィル

ありま・りえ 1975年、奈良市生まれ。京都市芸術大学を首席で卒業、東京藝術大学大学院修了。第68回日本音楽コンクールクラリネット部門入選、第18回日本管打楽器コンクールクラリネット部門入賞。2007年に東京佼成ウインドオーケストラに入団した。現在、洗足学園大学非常勤講師。