TKWO――音楽とともにある人生♪ ティンパニ・坂本雄希さん Vol.3
夢中になり、心動かされる経験は、特別な宝物
――佼成ウインドは、今も、子供たちに向けた取り組みに力を入れていますね
はい。文化庁が実施している「文化芸術による子供の育成事業」に協力し、先ほどお話しした音楽鑑賞教室のように小学校に出向いて演奏を行っています。楽団員と子供たちが共演するプログラムも組まれます。
事前学習として、楽団員数人が学校を訪問するのですが、予定がない限り、私はそのメンバーに加わって学校に行きたいと思っています。私が、小学校に小太鼓を持っていくと、子供たちは目をキラキラさせて、「これは、何だ?」と、興味を持ってくれるのです。そんな姿を見ていると、うれしくて。子供たちには、できるだけ多くのものに触れ、感動してもらいたいと思っています。それが究極的に言えば、音楽でなくても良いんです。例えば、絵でも、昆虫でも、機械でも構いません。夢中になったり、感動したりする豊かな心を持ってもらいたいし、その一つに音楽があれば、幸せだなあと思います。ですから、自分の演奏がそのきっかけとなるなら、喜んでやらせて頂きたいと思っています。
――最後に、中高生、吹奏楽ファンに向けたメッセージをお願いします
10代の学生には、どんなものでも良いですから、何か自分が没頭できるものを見つけてほしいですね。それが楽器であれば幸いです。
それが見つかったら、まずは自分でとことん努力して、とにかくできるところまで進んでみてください。すると、突き抜けて一流と言われるところにたどり着くかもしれません。何をするにも、これが大事なことだと思います。
とはいえ、物事を究めるというのは、たやすいことではないですから、壁にぶつかることもあると思います。でも、それを挫折と捉える必要はありません。この時、その道の専門家を参考にすることで、究めた人のすごさ、日々コツコツと積み重ねることの重要性を、身をもって感じられるチャンスでもありますから、そこで生まれた、道を究めた人への「すっげぇなあ」という感動、尊敬の念などは、自分だけの宝物であり、目指すべき目標になります。
私は趣味が多くて、ラテアート、写真の撮影、スーパーカブ(オートバイ)の整備などにはまり、どれも追求したくなるのです。追い求めるほど、それぞれに感動する場面があって、自分の心が動くのが分かります。そのたびに心は原点である音楽に戻り、演奏を通じて、人の心を動かす音を届けたいという気持ちが高まります。
感動した出来事を大切にして、自分の生き方につなぎ、生かしていく。それを積み重ねることで、より一層、人生が豊かになっていくのではないでしょうか。
プロフィル
さかもと・ゆうき 1977年、埼玉・川越市生まれ。国立音楽大学音楽学部器楽学科打楽器専攻卒業。劇団四季「リトルマーメイド」のレコーディング、フィギュアスケートのメダリストオンアイスにティンパニ奏者として、「のだめカンタービレ」のスペシャルドラマや映画の音楽に打楽器奏者として参加した。現在、東京佼成ウインドオーケストラ、熊川哲也氏が主宰するKバレエのオーケストラ「シアターオーケストラトーキョー」のティンパニ奏者、東京音楽大学吹奏楽アカデミー非常勤講師を務める。