TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・小倉清澄さん Vol.1
東京佼成ウインドオーケストラの「独自性」とは
――小倉さんは入団して今年で33年目。楽団に一番長く在籍するメンバーとして、東京佼成ウインドオーケストラの「らしさ」を形づくるものは何だと思いますか?
東京佼成ウインドオーケストラの音楽には、一貫したものがあります。その姿勢は「独自性」と言えるかもしれません。ただ、「独自」といっても、これは世の中から見たらそう見えるのであって、実は、小難しいものではありません。今も昔も、楽譜に書いてある作者の音楽を忠実に表現することを大切にしていて、そのために、それぞれの楽団員が適正な音で演奏する。この共通の理解がしっかりと受け継がれてきて、それが「独自性」と思われているのでしょう。
「忠実に表現する」と話しましたが、これはなかなか奥が深いものなのです。例えば、活字で「このたびは」と記されていたとします。これを自分勝手に解釈して、一文字ずつ、「こ・の・た・び・は」とぶつ切りにして読むのは、忠実ではありません。音楽も文章と同じで、音をただ単に並べるだけでは駄目なのです。演奏には抑揚やフレーズ(旋律の自然な区分)がありますし、演奏の基になる楽譜には、作者の感情や意図が込められています。
楽譜に「明るく」と書いてあったら明るく、「元気に」と書いてあったら元気よく、「酔っ払いのように」と書いてあったら酔っ払いのように演奏することが重要です。さらに、同じ酔っ払いでも、ほろ酔いで気分のいい姿なのか、泥酔して千鳥足で歩く様子なのか。想像力を働かせなければなりません。作曲者の真意を読み解く力を養い、自分の理解を音として表現できる演奏技術を磨くこと。この二つを常に探求し続けてようやく、楽譜通りの演奏が可能になります。
プロフィル
おぐら・きよすみ 大分・中津市生まれ。中学校入学と同時に吹奏楽部でクラリネットを始める。1984年に東京藝術大学音楽学部器楽科を卒業し、85年に東京佼成ウインドオーケストラに入団。故フレデリック・フェネル氏をはじめ、内外の指揮者と同オーケストラで多くのソロ曲を共演する。全国でクラリネットクリニックを開催し、小学生から社会人までを指導。各地の吹奏楽コンクールの審査員も務める。現在、くらしき作陽大学非常勤講師。