TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・秋田孝訓さん Vol.3
上達するには「やりたい」という意欲を常に持つ
――吹奏楽に励む中学生、高校生にアドバイスを
インターネットのおかげで、現在は、アマチュアからプロまでさまざまな人が演奏する音を聴けるようになりました。そうした中で、優れた演奏を見極めて、それに興味を持って、まねて練習してみる。それが大切です。
学生の方でよく耳にするのは、コンクール前だから、コンクールの曲しか練習しないということ。それでは引き出しはなかなか増えないし、上達はちょっと厳しいかと思います。あまり枠を設けずに、自分が「やりたい」という意欲を常に持っていてください。
僕は学生の頃、音楽に関していろんなことに興味を持っていましたが、特に映画のサウンドトラックが好きでした。例えば、1996年に放映されたSF映画「インデペンデンス・デイ」です。宇宙から攻めてきた敵を迎え撃つ時、アメリカの大統領が戦闘員に向かってスピーチをするシーンがあるのですが、スピーチが始まる前から音楽が流れ出して、それもスネアの音から始まるのです。そのシーンがめちゃくちゃ格好良くて、音楽が雰囲気にぴったりで、映像を引き立てているんです。サウンドトラックをひたすら聴いて、映画のあの雰囲気を「出したい、出したい」と思って練習をしていました。
「こんな感じかな」「装飾音符はどうやってつ付けているんだろう」。そう自分に問い掛けながら、耳を頼りにまねをしていました。こういう演奏をしてみたいという憧れ、そういう気持ちが、成長につながると思います。
現代では、機械で構成された打ち込みの音楽があふれています。生演奏よりも、打ち込みの音楽を聴く機会の方が圧倒的に多いでしょう。そうすると、機械でしか出せない音に耳が慣れてしまいます。人間が奏でる“生”の音には、当然、限界やゆらぎがありますが、機械は、人間の手では出せない速さも、厳密にテンポを刻むこともできます。“生”では出せない音だからこそ、それが格好良いというのも分かるんですけどね。
音楽は時代と共に変わっていきます。軍歌のような行進曲がはやり、演歌のこぶしが良かった時代もあります。そこから、現代のように機械が作り出す音が普通となってくると、音に表情がある、歌うように奏でる“人間らしい”音楽の良さは、今の学生の子たちには伝わりにくいのかもしれませんね。
いわゆるクラシカルなものや人間同士のアンサンブルの音楽をする上では、肥やしになる生演奏を聴いてほしいです。そんな、生身の人間には作り出せない音が格好良い、これが打楽器の音なんだと思ってしまったら、自分では目標にはできませんからね。音の感じ取り方にも幅が出てきます。
繰り返しになりますが、成長したい、もっと上手くなりたいと思ったら、ぜひ、生の音を聴いて、まずは、まねてください。
プロフィル
あきた・たかのり 1984年、横浜市生まれ。2013年、東京佼成ウインドオーケストラに打楽器奏者として入団した。このほか、ミュージカルやジャズ、アーティストのライブサポートなどジャンルを問わず活動中。寺田由美パーカッションアンサンブル「ドライヴ」、「くぼった打楽器四重奏団」、ラテン系ビッグバンド「Monaural Banquet Orchestra」、「Blossom」、「東京R合奏団」各メンバー。「侍Big Band」を主宰している。