TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・秋田孝訓さん Vol.2
ドラマーとしては、テンポが崩れることは一番格好悪いことだと思うんですよね。全体の調和を意識しながら、体内にメトロノームを入れた感覚を持って、“聴いている人が自然に聴こえるように演奏する”――これが絶対条件です。
打楽器奏者として、他の楽器に寄せていくこと、それでいて、「自分」という独自性を失いたくない思いは、相反しているようですが、どちらも大切で、両立できてこそ本物の打楽器奏者だと思います。その時々で、両方のバランスをどう取るかは、それなりにジレンマはありますね。
演奏者として成長するには必要なことだったと思うのですが、ジレンマがあったのは、佼成ウインドに入団したての頃でした。ここでやっていくんだという気持ちが強すぎたのでしょう。他の楽器を気にしてリズムが変わるのはいけないことで、自分がリズムを刻んでいるんだからと、今思えば独り善がりな演奏になっていました。そこを周りのメンバーがフォローしてくれて、僕の方が寄せてもらっていたんです。
メンバーとコミュニケーションを取りながら、ある程度ここで演奏をしてきた今は、このぐらいがちょうどいいというあんばいが分かってきました。ジレンマを抱えていた当時のプレーが全てダメだったとも思っていなくて、試行錯誤の積み重ねが必要だったのでしょう。今も発展途上だと思っているので、さらに極めていきたいですね。
――プロにとっての優れた演奏というのはどういうものですか
アマチュアの方は、「手が速く動く」「16分音符を正確に刻める」といったテクニックに重きを置きがちだなと感じています。いわば、表面的になりやすい。実際、プロよりも手の動きが速い人はたくさんいます。でも、音楽はそうではないと思います。音で会話をするように――時には抑揚をつけたり、相槌を打ったり、気持ちを乗せて、自分の音を周りに溶け込ませたり、自己主張したりもします。ただ「叩く」というのではなく、何を音によって伝えたいのか、それを意識して、演奏することによって歌っているように聴こえる演奏ができるようになります。
――スティックなど叩く道具で、演奏の違いが出ますか
もちろん道具による違いというのはありますが……、それより、叩く場所や、叩き方ですね。アマチュアの方が手に入らない物を、僕らが使っているということはありません。誰もが入手できる物を使っています。
僕は中学生の頃、LUNA SEAの真矢モデルのスティックを買って、使っていました。でも、全然、真矢さんのように叩けないから、絶対に本人が使っているのは、別のもっと品質の良いスティックだと憤っていたんですよね。でも、違いは腕だったんですね(笑)。
プロフィル
あきた・たかのり 1984年、横浜市生まれ。2013年、東京佼成ウインドオーケストラに打楽器奏者として入団した。このほか、ミュージカルやジャズ、アーティストのライブサポートなどジャンルを問わず活動中。寺田由美パーカッションアンサンブル「ドライヴ」、「くぼった打楽器四重奏団」、ラテン系ビッグバンド「Monaural Banquet Orchestra」、「Blossom」、「東京R合奏団」各メンバー。「侍Big Band」を主宰している。