TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・秋田孝訓さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今企画の10人目に登場するのは、打楽器奏者の秋田孝訓さん。吹奏楽の道を選んだ理由や、吹奏楽における打楽器の魅力を聞いた。

誰かの要望に応えて成し遂げられる人に憧れて

――秋田さんは打楽器の中でもドラムやコンガなど、「太鼓」が主な担当です。ドラムというと、ロックバンドで活躍するイメージを持つ人が多いと思いますが、なぜ、吹奏楽の道に?

自分たちで作った曲を自分たちで演奏する、いわば、そういうクリエイティブな演奏よりも、譜面に記された作曲者や編曲者の要求に忠実に応え、しかも管楽器と演奏をすることが好きだったからです。

楽器に触れるきっかけは、中学1年生の時に、チューバをやっていた兄の影響で吹奏楽部に入ったことでした。その頃から、J-POPの歌が入る曲の演奏よりも、管楽器と共演するビッグバンドやジャズ、フュージョンが好きでした。

大工や工芸品を作る職人のような演奏家になりたかったんです。誰かの望むものを、その要望に応えて成し遂げる人たちに憧れて、自分も演奏家として、作曲者や編曲者のイメージを表現できるようになりたいと思っていました。アーティストやバンドマンといったクリエイティブな活動よりも、やりがいを感じたんですよね。

ロックバンドは自分が理想とする音楽とは別系統だと思っていたので、吹奏楽を選んだのは自然なことでした。中学生の時に湧いた興味がずっと続いて、今につながっています。

――クラシック音楽は好きですか?

「ベートーベンのあれがいい」とか「バッハのこの曲がどうのこうの」とか、音大に通っている頃、学生がそう話すのをよく耳にしていましたが、自分はそんな学生たちとは何か違うものを感じていました。もちろんクラシックやオーケストラ作品は好きです。なのですが、打楽器科はクラシック以上にアカデミックな現代曲を多く学ばなければならないので忙しいんです(笑)。彼らが話していたことは、今となっては必要な事である事は分かるのですが、大学生の頃は、クラシックよりもジャズやミュージカルに興味があったので。何百年も前のクラシックの音楽家のことやアカデミックな近現代の音楽の成り立ちについての勉強に興味をそそられなかったんですよね。

「誰かの望むものを、その要望に応えて成し遂げる人たちに憧れて」と話したばかりで矛盾するようですが、音大生の頃は何かとやる事が多くて、伝統的な音楽を勉強する事と技術を磨く事の両立がなかなか出来ず、少し反抗的に「格好良ければいいじゃん」と思っていました。音大(音楽大学)では、クラシック音楽や現代音楽に傾倒する学生が多いですからね。それに対するコンプレックスなのか、虚勢を張っていたのか……。よく分かりませんが、そんな気持ちもありました。

吹奏楽はオーケストラと違って、ビッグバンドのスタイルをとることもありますし、クラシカルな音楽も、J-POPでも、さまざまなジャンルを演奏します。しかも、リズムや音色、音の響きは比較的自由に表現でき、柔軟性があります。

その上で、打楽器について言えば、演奏するジャンルによって、求められる音が変わってくるので、曲によって楽器を替え、さまざまな種類の打楽器を演奏できる吹奏楽は、自分の志向にマッチしていると思います。

【次ページ:ただ叩くのが打楽器ではない】