TKWO――音楽とともにある人生♪ テナートロンボーン・今村岳志さん Vol.1
トロンボーンはまず、正確さよりも心地よさが上達の秘訣?
――演奏時に、前後に動かして音を出すスライド管には、どの位置でどの音が出るといった目印があるわけではありません。微妙な音階の位置を、どうやって覚えるのですか
スライド管には基本的に七つのポジションがあり、初心者は、最初に教則本を見たり、先輩から大体の位置を教わったりしながら、チューナーなどを使って正確なポジションを覚えると思います。しかし、正確な位置を完璧に覚えようとすることは必ずしも良いとは限りません。その日のコンディションもそうですし、調性や和音の役割によっても微妙にポジショニングは変化するからです。ではどうすればいいか。それには、的確なポジションにすぐ動かせるための耳を磨くことが重要です。私が日頃行っている練習の一例を挙げるとすれば、メロディーを吹きながら心地よいポジションを探していくことを大切にしたりしています。
中高生になじみのあるトロンボーンの種類は、テナートロンボーン、テナーバストロンボーン、バストロンボーンという3種類で、高音のテナーから低音のバスにいくに従って管の巻きが増えて、より低い音が出る構造になっています。私が中学生の頃の、ちょっと恥ずかしいエピソードがあるのですが、当時の私は巻きが増える方が良い楽器で格好よく、上級生が使うものと勘違いしていました。それで、中学3年の時は一番巻きの多いバストロンボーンで、1番パートをこれ見よがしに吹いていました。今思い返しても本当に無茶苦茶なことをしていました(笑)。
――他の楽器に転向したいと思ったことは?
実は1回だけ、トランペットをやったことがあります。トランペットはオーケストラの“花形パート”で、メロディーを吹くことが多く、とにかく格好いい。それで、中学3年生の時にトランペットパートに入れてもらいました。でも、音の出し方は同じなのに、マウスピースの吹き口の大きさが違い、もう全然音が出なくて。それで、〈これは無理だな〉ということになり、2、3日でトロンボーンに戻りました(笑)。
プロフィル
いまむら・たけし 1987年、宮崎・三股町生まれ。東京藝術大学在学中の2008年に同大学の卒業生、学部生とトワイライト・トロンボーン・カルテットを結成。各地で演奏活動を行うほか、これまでにCDを4枚リリースした。第29回日本管打楽器コンクールトロンボーン部門で入選。現在、九州トロンボーンアンサンブル「ERNST」代表を務める。楽曲の編曲にも取り組み、楽器の特徴や魅力を生かしたアレンジが好評を博す。