クラスター爆弾の被害をなくすために 『私のお金、私の責任』 地雷廃絶日本キャンペーン理事・目加田説子氏

クラスター爆弾製造企業への投融資の現状

オランダとベルギーのNGOは2009年から毎年、『クラスター爆弾への世界の融資――共通する責任』という調査報告を出しています。去る5月23日に最新の報告書が発表され、東京で記者会見が行われました。現在、クラスター爆弾の製造が明らかな世界の企業は、アメリカに2社、韓国に2社、中国に2社の計6社です。これらの企業に対して、ある一定額以上の投融資を行っている世界の金融機関は166社だと報告されました。日本の金融機関4社も明記され、その総額は約20億ドル(2200億円)と指摘されました。締約国の中では最多です。

さらに、今年4月の国会で、厚生年金と国民年金の積立金の管理、運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、クラスター爆弾を製造するアメリカのテキストロン社の株を192万株(80億円相当)保有していることが明らかになりました。これは問題だとの声が上がりましたが、政府は、日本はクラスター爆弾の製造禁止を法律で定めているものの、製造企業の株式を保有することを禁止するものではないとの見解を閣議決定したのです。

金融機関が投融資するということは、クラスター爆弾の製造を奨励するようなものです。そしてその資金は、元々私たちのお金です。私たちは、金融機関に対して責任を問い続ける責任があるのではないでしょうか。情報開示や説明責任を、私たち一人ひとりが金融機関に対して求めていかなければなりません。

質疑応答から

――クラスター爆弾の製造をやめた企業はありますか? また、その理由は?

シンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリングという会社が、2年前に製造を停止すると表明しました。マーケットの縮小が最大の理由です。オスロ条約に101の国が加盟していることもあり、国際社会の評判を気にして、各国はクラスター爆弾を使いにくいという状況があります。結果、売却先がなくなっているのです。

先ほど、世界には製造が明らかになっている企業が6社あると紹介しましたが、その一つ、アメリカのテキストロン社が昨年8月、クラスター爆弾の製造停止を発表しました。今年中に停止する可能性が高いとみられています。報告書にあるアメリカのもう一社は、テキストロンに部品を供給する子会社ですから、事実上、アメリカでのクラスター爆弾の製造は停止することになります。

クラスター爆弾の問題に対してヨーロッパの国々が積極的に取り組んできました。これに合わせて、欧州の金融機関も、製造企業への投融資を忌避しています。世論の関心は高く、たばこやギャンブル、アルコールよりも忌避感が強い状況です。巨大な資金がクラスター爆弾の市場から引き揚げており、資金調達が困難であることも大きな要因でしょう。

(6月14日、浄土宗不動寺長専院で行われた「アーユス総会セミナー」の講演から)

プロフィル

めかた・もとこ 中央大学総合政策学部教授。専門は国際公共政策。NPO法人「地雷廃絶日本キャンペーン」(JCBL)の発足時から携わり、現在、理事を務める。クラスター爆弾やダルフール紛争と社会的責任投資について調査、執筆活動を続ける。著書に『行動する市民が世界を変えた――クラスター爆弾禁止運動とグローバルNGOパワー』(毎日新聞社)、『地球市民社会の最前線――NGO・NPOへの招待』(岩波書店)など。

【関連記事】
「クラスター爆弾の製造企業に対する投融資が世界で310億ドル 責任投資や企業の社会的責任が一層問われる時代に」(本紙5月29日付既報)https://shimbun.kosei-shuppan.co.jp/news/6907/

「預金や年金の使われ方に一層の関心を 平和を築くための「責任投資」とは 東京でシンポジウム」(本紙3月23日付既報)https://shimbun.kosei-shuppan.co.jp/news/4943/