気候変動に挑む世界の取り組み 「気候ネットワーク」東京事務所長・桃井貴子氏
対策が遅れる日本の現状
そうした世界の流れに逆行しているのが、日本です。特に世界から批判されているのが石炭火力発電所の新設計画です。日本には、石炭火力発電所が現在でも100基以上あり、CO2の3~4割は石炭火力発電所から排出されています。
これに加えて2012年以降に50基の石炭火力発電所の新設計画が浮上しているのです。トランプ政権になった米国でさえ、オバマ大統領の時代から変わらず石炭火力発電所の廃止が着々と進み、現在でも18日に1基のペースで廃止されているといいます。
このように石炭火力発電を増やしているのは日本だけです。その理由は、日本の政策で「高効率火力発電を徹底活用する」ことが掲げられ、エネルギー基本計画でも石炭が原発と並んで「ベースロード(基幹)電源」に位置付けられていることや、そこに16年から始まった電力の小売全面自由化などが拍車を掛けているからです。国内では30年に向けて石炭火力発電所が史上で最も増えることになりかねません。問題は、多くの国民が知らないところで急速に計画が進んでいることにあるのです。
このままでは、日本は「環境後進国」になってしまいます。エネルギー政策を抜本的に変え、再生可能エネルギー100%の実現を目指していく必要があるのです。
では、私たちに何ができるのでしょうか。一つは、声を上げることです。現在、「エネルギー基本計画」の改定に伴い、経済産業省がウェブサイト上に意見箱を設けています。そこに意見や考えを提示することはとても重要なアクションです。もっと簡単にできることとしては、日常生活で使用する電力を、省エネや再生可能エネルギーを進める電力会社に乗り換えることなどがあります。
日本では政治の場で気候変動が取り上げられることはあまりありません。これは国民の声がまだまだ小さいことを表しています。現状を変えるために国民が地球温暖化問題に関心を持ち、自分たちの生活を振り返る――足元を見つめ直して声を上げていくことが大切なのではないでしょうか。
(3月10日、東京大学伊藤国際学術研究センターで行われた世界宗教者平和会議=WCRP/RfP=日本委員会青年部会による公開学習会から)
プロフィル
ももい・たかこ 認定NPO法人「気候ネットワーク」東京事務所長。フロン問題に関する環境NGOのスタッフ在職中は“市民立法”として「フロン回収・破壊法」の制定に尽力した。その後、衆議院議員秘書、全国地球温暖化防止活動推進センター職員を経て、2008年より気候ネットワークの専従スタッフになる。13年から現職。