地球と共生する文明の未来を考える 京都造形芸術大学教授・竹村眞一氏

デジタル地球儀「触れる地球」を紹介する竹村氏

日本では、地球の環境問題や気候変動が、平和と結びつけて語られることはそれほどありませんが、実は大変密接な関係があります。近年のことでいえば、2010年から2012年にかけてアラブ世界で起きた民主化運動の「アラブの春」が挙げられます。

中東地域では2006年から5年もの間、とても厳しい干ばつに見舞われました。日々の水や食料が手に入らず、家畜は8割が死に、農地も半分以上が使えない状態でした。さらに、こうした状況に輪をかけたのが、2010年にロシアで発生し、5万人以上が命を落とした熱波です。

この熱波により、大穀倉地帯を有するロシアで小麦の生産量が半減し、輸出が禁止になりました。ロシアからの輸入に依存していた中東諸国では穀物価格が急騰し、それが政権への不満となって、ついには内戦に発展したのです。

中東地域には、オスマン帝国時代に築かれた他民族や他宗教が共存する社会構造がありました。人々が違いを超えて和するノウハウを培ってきた中東地域は、共同社会の先進圏であったにもかかわらず、20世紀帝国主義やパレスチナ問題によって民族間の分断が創出され、さらに近年こうした気候変動と資源制約が拍車をかけて内戦状態に陥ったのです。内戦の原因が全て、環境問題や気候変動にあるわけではありませんが、水や食料不足といった資源問題を無視することはできません。私は、気候変動の問題に正面から取り組むことが、平和への道を開くために、非常に重要なことだと考えています。

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