生み出す力の見つけ方 デザイナー、タレント・ドン小西氏

自分の能力を引き出すために
僕は、自分の能力を引き出すために、センスを磨くことが大切だと思います。もちろんファッションセンスだけではない。経営のセンス、しゃべりのセンス、食事会の幹事もセンスが必要ですよね。

ファッションで言えば、自分を上品に見せようと考えてコーディネートしたのに、他人から見ると全然上品に見えない人がいる。これはセンスがないということ。自分の想定と、人から見た印象の誤差が多ければ多いほどダサいのだけれど、自分がダサいと気づいていない人は意外と多くいます。自分を客観視できていないんですよね。

センスがいい人は、この誤差が少ない。つまり、センスアップするためには、どれだけ自分を知っているかが問われます。

皆さんは自分のことを知っていますか? 自分の中にはAという自分もいれば、Bという自分もいる。こうした複数の自分を常にコントロールできる人は、自己を客観的に見ることができ、自分の立ち位置ややるべきことを的確に捉えられる。これがスマートに成功し続ける秘訣(ひけつ)だと思います。

講演中にファッションチェックを行うドン小西氏

もう一つ大切なことは、洞察力を身につけること。便利な時代ですから、何も考えずに生きられますし、何事も人任せになりがちだけれど、それでは未来を切り開いていくことはできません。

スーパーに買い物に行く時もそうです。あまりにも安く生鮮食料品が売られていることがありますが、僕は絶対に買いません。何か裏があるかもと考えます。安ければ安いほど良いという問題ではないと思うからです。逆に独創的な商品だったら、高くても買います。そうやって自分で選択しながらセンスアップしていく。そこに個性が出てきます。

世の中がどういうふうに変わっていっているのか、観察する癖をつけることが大切です。客観視でき、しかも自分らしい見方で世の中を見られるようになると、パッと良いアイデアが浮かんだり、個性的な考え方ができたりするようになります。何が起こっても自分流を保ち、未来に向かって創造していく力が、君たちを成功に導いてくれると思います。

(9月17日、佼成学園中学・高等学校の文化祭「渦潮祭」で行われた講演会『生み出す力の見つけ方』から)

プロフィル

どん・こにし 1950年、三重県生まれ。ファッションデザイナー、タレントとして活躍する。佼成学園高校出身。文化服装学院卒業後、アパレルメーカーに勤務し、79年に独立。その後ファッションブランド「FICCE」「YOSHIYUKI KONISHI」を設立した。91年に毎日ファッション大賞、98年、ファッションエディターズクラブデザイナー賞を受賞。現在、名古屋学芸大学客員教授、東京成徳大学特別招聘教授を務める。著書に『逆境が男の「器」を磨く』(講談社+α新書)など。