【豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長・栗林知絵子さん】広がる子ども食堂の取り組み 地縁の中で一人ひとりの成長を見守る社会へ

子供たちに「経験」を提供する取り組みも

――孤立しやすい家庭と地域をつなぐ子ども食堂の輪は全国に広がっていますね

子ども食堂は現在、全国に500カ所以上あり、それぞれ特長を生かして活動されています。レストランの店主が運営する子ども食堂もあれば、地域の公民館やお寺で試験的に始めている所もあります。子供たちに「経験」を提供する取り組みも見られます。

宮崎にある子ども食堂では、地域の飲食店と提携してお母さんにチケットを渡し、そのチケットで行きたいお店に親子で行けるのです。また、カラオケチェーン店が子ども食堂を開いている所もあるのですが、そこはリゾートホテルも経営していて、夏休みにひとり親家庭の親子をホテルに招待しています。親子でレストランに行ったり、旅行に行ったりするということは、彼らにとって特別な体験です。

それぞれの子ども食堂が、サポートのあり方を工夫していくことで、それまで機会に恵まれずにいた子供たちの豊かな成長を後押しすることができます。自由に遊んだり、年上の子のまねをしたり、関心を持ったことに挑戦したりといった学びの場と機会があれば、子供たちは自分の力で成長していきます。

冒頭にお話しした、私が貧困問題に取り組むきっかけとなった中3の男の子はその後、公立の工業高校に進学し、現在は就職して社会人として自立した生活を送っています。彼が高校に合格した時、私たちは地域の人を集めて「受験サポート報告会」を開催しました。一人の子供の話を聞くために、100人くらいの大人が集まってくれました。彼は、みんなから「頑張ってね」「応援しているよ」という励ましの声を掛けられました。すると、彼が、「今まで生きてきて、一番幸せ。生きていて良かった」と言ってくれたのです。お金をもらった訳でも、暮らしが楽になった訳でもなく、ただ、いろんな人に応援してもらい、生き方を肯定してもらっただけですが、それが人にとってどれほど必要なことかを痛感しました。

同じように、お母さんたちも、子ども食堂に来てご飯を食べて、大事にされることで、「世の中ちょっと良くなったね」と感じてくれています。生きやすい社会にするためには、人と人とがつながっていくことが大切です。そうして支え合える関係の中で、励まされて頑張れたり、ちょっと幸せな気分になれたり、自分を肯定することができたりするのかなと考えると、これからも、つながる地域をたくさんつくっていけばいいと思えるのです。

プロフィル

くりばやし・ちえこ 1966年、新潟県生まれ。2004年からプレーパークの運営に携わり、11年にNPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」を設立。小中学生を対象とした無料学習塾、子ども食堂のほか、地域のお寺を借りて「夜の児童館」を運営する。「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアー実行委員会の代表として、子ども食堂のネットワーク構築にも尽力している。

「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」ウェブページ http://toshimawakuwaku.com/