【認定NPO法人難民支援協会 渉外チームマネージャー・赤阪むつみさん】難民も同じ地球に暮らす“家族” 支援の一歩は相手を知ることから

難民の背景に目を向けて、ポジティブな声を上げよう

――相手を知ることが大事ですね

そうですね。日本の社会でも、住む家も仕事もあって、毎日当たり前にご飯が食べられる人がいる一方で、さまざまな理由から貧困に苦しむ人もいます。自分とは違う生活環境で、困難を抱えながら生きている人がいるのだということを認識するところから、支援の一歩は始まります。そして、支援をするのに国籍は関係ないはずです。日本人だろうと、外国人だろうと、同じ人間なのですから。

日本の難民認定や制度改善が進まないのは、国民の関心が低いからだといわれますが、昨年2月に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、日本も避難民を大勢受け入れて、ニュースやSNSでも情報発信が行われるようになり、以前より紛争や難民といった世界の問題への関心が高まっているように感じます。とても喜ばしい半面、もともと日本に逃れてきていた難民の存在が、置き去りにされているようにも思えるのです。

私たち支援する側も、100%の認定率や、日本人と同等の福利厚生を求めているわけではありません。ですが、日本では以前にもインドシナ難民を受け入れ、第三国定住支援などを行った実績があります。ウクライナ紛争によって国民の難民への関心が高まっている今、先の経験も踏まえて、外国人労働者も難民・避難民も地球という一つの“家”に暮らす家族として受け入れ、包括的な支援が行える制度を考えていくチャンスではないか――。そう願っていましたが、現実は厳しく、日本政府がとった行動は、難民の命を危険にさらす入管難民法案の提出でした。

――今国会に法案が提出されましたが、影響はありますか

もともとこの改正案は、一昨年の通常国会に提出されたものの、難民申請に制限を設けるなどの内容に国内外から批判が出て、廃案になりました。しかし今回、難民認定制度の厳しさの中で難民認定されずに申請を繰り返さざるを得ない人を送還可能にするため、2年前の旧法案の骨子を残した改正案が再び提出されたのです。

改正案の問題点はさまざまありますが、私たち支援者が危惧するのは、難民認定の申請中は送還が一律に停止されるという規定が見直され、申請を複数回繰り返している場合、3回目以降は送還が可能になった点です。ウクライナ避難民のような紛争から逃れた人らを保護する制度が導入されるなど、改善が見られた部分もありますが、送還促進をより強めるのではと非常に心配しています。

――日本の難民制度が改善される方向に社会が動くには、どんな取り組みが必要ですか

困っている人の思いを自分事として捉え、皆が生きやすい社会を築こうと望んでいる人はたくさんいます。立正佼成会の皆さまが、長年難民支援をはじめ、貧困や紛争などに苦しむ世界の人々の救済に尽力されているのも、同じ人間として命は平等であるという思いに立たれているからだと思います。

入管難民法改正案の再提出を受け、JARではツイッターキャンペーン「#難民の送還ではなく保護を」を3月15日からスタートしました。難民受け入れへの賛同の声を募集するものですが、世論の関心が高まることで、法案の十分な議論を促すことが狙いです。このインタビューをお読みの皆さんも、ぜひ「難民を保護しよう!」というポジティブな声を私たちと共に上げて頂ければと思います。

JARはこれからも、難民の代弁者として、声なき声を届けていきます。

プロフィル

あかさか・むつみ 大学院修了後、NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)のラオス事務所にて、森林保全に関する地域開発と政策提言を行う。その後、シュタイナー教育活動を経て、2014年に難民支援協会に入職。定住支援部、支援事業部を経て、18年より現職。