【認定NPO法人難民支援協会 渉外チームマネージャー・赤阪むつみさん】難民も同じ地球に暮らす“家族” 支援の一歩は相手を知ることから

認定NPO法人難民支援協会(JAR)の赤阪むつみ渉外チームマネージャー

ロシアの軍事侵攻を受け、日本でもウクライナの人々を避難民として受け入れてきた。政府によるサポートはもちろん、民間レベルでも自治体や企業がさまざまな支援活動を展開している。国民の関心もかつてないほどの高まりを見せる一方で、ミャンマーやアフガニスタンなどから日本に逃れてくる人々の難民認定は依然として進まず、不安定な状況に置かれ続けていると、認定NPO法人難民支援協会(JAR)の赤阪むつみ渉外チームマネージャーは言う。さらに、3月7日には、難民申請中でも外国人を母国に送り返せるようにする「入管難民法改正案」が国会に提出された。日本の難民制度が問われる今、改めて赤阪さんに認定制度の内容や認定率が低い背景などを聞いた。

難民認定率1% 申請者が直面する貧困と厳しい現実

――日本に難民として逃れてくる外国人はどのくらいいますか

2021年に、世界で紛争や迫害などにより母国を追われた人の数が、過去最多の8930万人となりました。この年は、日本が「難民条約」に加入して40年にあたるのですが、この間に延べ8万7892人が日本で難民申請を行い、認定されたのは915人、たった1%です。この数字を聞いて、驚く人がほとんどです。

JARは今年の7月で設立24年を迎え、これまで約8000人の難民を支援してきました。彼らの出身地域はアフリカや南アジアを中心に多岐にわたりますが、皆、母国から逃げざるを得ない、やむにやまれぬ理由を抱えて日本に渡ってきています。

――日本の難民認定数が少ないのはなぜですか

難民条約では、難民とは自国で迫害を受ける恐れがあるため他国に逃れる人々と定義されています。これは、現在の紛争や内戦から逃れる人々に当てはまらない部分があるのと、日本は定義の解釈自体が非常に厳格です。

さらに、難民認定手続きの際、米国、英国、ドイツ、フランスといった主要国では、難民審査でのインタビューに代理人の同席が認められています。しかし、日本だけは弁護士や支援者などの同席が認められていないのです。こういった手続きの問題が難民認定数が少ない要因として挙げられます。こうした制度そのものが改善されない中、難民申請中の人を送還できるようにする法案が提出されました。

――難民申請中の生活はどうなっているのでしょうか

難民に関する手続きを担う法務省は、難民を「保護する(助ける)」というよりも、「管理する(取り締まる)」という意識が強いように感じます。例えば、外国人が日本の空港で「難民申請をしたい」と言った場合、高い確率で収容されてしまいます。収容とは在留資格がなく、国外退去を命じられるなどした外国人の身柄を拘束する行為です。日本には難民のためのビザがないため、彼らは短期滞在が可能になる「観光」などのビザで入国します。ですが、空港で入国の目的を聞かれ、当人が正直に難民としての保護を求めてしまうと、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)に違反するとして、もともと持っていた観光ビザまで取り上げられ、強制送還の対象になってしまいます。

収容=保護というイメージがあるかもしれませんが、実態は刑務所に近いです。携帯は取り上げられ、外部との連絡手段は公衆電話一つ。情報源はテレビだけです。面会はできますが30分の制限付き。その中で母国の情報を集め、弁護士を探し、私たちのような支援団体につながることは容易ではありません。

確かに、難民申請者の中には就労目的の人もいます。ですが、なぜ彼らには働く場所が必要なのでしょう。もちろん、一人ひとり事情は違いますが、その背景にあるのは「貧困」です。申請者の多くがアフリカや南アジア出身と話しましたが、そうした地域で暮らす人々がなぜ貧しいのかということをひもといていくと、そこには民族紛争や宗教弾圧、差別や迫害があり、家を焼き払われたとか、家族を殺されて自分も命を狙われているとか、難民の定義に該当する事情を、皆少なからず抱えているのです。

難民申請には短くても数カ月、不服審査(審査請求)や裁判所での審査を含めると何年もかかることもあります。現在、その期間は平均4年5カ月といわれています。多くの難民が日本での在留を認められずに、公的な支援にアクセスもできず、今日明日をどう生き延びるかという厳しい現実に直面しています。中にはホームレスに陥る人もいて、JARではそうした方々のカウンセリングをはじめ、住居や食料品、医療支援などを行っています。

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