【NPO法人「明るい社会づくり運動」理事長・秋葉忠利さん】広島市長の経験生かし 明社と平和運動の橋渡しを

広島市長を務めていた2010年には、「ARMS DOWN! 共にすべてのいのちを守るためのキャンペーン」に協力

「ほっとけない」社会を築いて かけがえのない生活と命を守る

――より良い社会をつくるには、市民の主体性も重要になりますね

そうですね。市民運動はこれまで、普通の暮らしを営む人々が生活の中で、自分たちの命、権利を守るための知恵を生み出し、結果として社会を安定させてきました。

市民にとって日々の生活はかけがえのないものです。英語で、生活を「ライフ」と言いますが、ライフには、命、人生に加え、広くは、宇宙、有機体という意味もあります。生活は命とつながっており、生活の延長が人生です。さらに人類の生活は、地球環境に深く関わり、人間を含めた生命全体に影響を及ぼします。

昨年行われた明社の全国集会で、大阪の方がマイクロプラスチックの問題について話されました。これは、ごみの一つの形態ですが、明社の一地域の方が豊富な知識を持ってごみ問題に取り組んでいることが先進的だと思いました。地域に根付いているからこそ、この問題を切実に感じているのだと腑(ふ)に落ち、明社運動の意義を見つめ直す機会になりました。

ごみの問題への取り組みは、私たちの生活を守るためであると同時に、地球の生命を守ることにつながります。命や権利を守るには多くの問題を解決していかなければなりません。その知恵は生活の場や生活者の視点から生まれることが多く、生活と地続きの市民運動が果たす役割は大きいのです。

――今後、社会で大事にしていくべきこととは?

明社運動の提唱者である庭野日敬氏も言われていますが、「当たり前のことが当たり前であり続ける社会」を目指しています。

朝、お天道様が昇ると、顔を洗ってご飯を食べ、元気に学校や仕事に行く。子供は健やかに成長し、年を取ったら平穏な暮らしが保証され、やがて最期を迎える――。庶民が昔から思い描いてきた安らかな人生が当たり前にあり、環境に恵まれない人には皆で手を差し伸べる。それでも間に合わないところを政府が助けてくれる、良い循環がある社会です。

一人ひとりが何よりも大事にされる社会が必要です。明社の目標の一つである「ほっとけない」社会とは、まさにそうした社会だと思います。人類が蓄積してきた知恵と協力関係、さまざまなご苦労をされてきた先達のご経験を基に、手を携えて新しい時代をつくっていけたら素晴らしいですね。

プロフィル

あきば・ただとし 1942年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科を卒業。米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得後、タフツ大学などで教壇に立つ。広島に拠点を移して平和運動に携わり、90年に衆議院議員に当選。99年から広島市長を3期12年間務めた。2010年、アジアのノーベル賞とも呼ばれる「ラモン・マグサイサイ賞」を受賞した。