【JAXA「はやぶさ2」プロジェクトマネジャー・津田雄一さん】遙かなる宇宙へ――生命誕生の謎に迫る
「はやぶさ2」の帰還に向けて
――津田さんが宇宙への憧れを抱くようになったのはいつ頃ですか
小学生のころ、ハレー彗星の接近が大ブームになりました。サンタクロースにお願いしたら、なんと望遠鏡をプレゼントしてもらったのです。父親と一緒に夜中に起きてはハレー彗星を探しましたが、全然見つかりませんでした。さらに当時は、ハレー艦隊と言われていましたが、世界各国がハレー彗星の探査機を打ち上げたんですね。日本も2機の探査機を打ち上げたことを知って、子供ながらに〈宇宙ってすごいところだな〉という思いを抱いていました。
宇宙飛行士の秋山豊寛さんが宇宙船から同時中継をし、アメリカの探査機ボイジャーが天王星や海王星などを通過するたびに、心を躍らせていたのを覚えています。
――「はやぶさ2」の帰還は、2020年東京五輪が開かれる年になります
2020年の帰還を成功させて「はやぶさ2」が日本の科学、技術、宇宙探査の全てを高めたと言われるようにしたいですね。
そういえば最近、「『はやぶさ2』は行きが3年半もかかるのに、帰りが1年なのはどうしてですか」「『はやぶさ2』は、二つの平面アンテナに変わっていますが、なぜですか」といった、私たちでも舌を巻くような鋭い質問をする子供たちが増えてきました。将来がとても楽しみです。日本の科学技術の底上げにもつながっていくのかなと期待しています。
この地球から私は「はやぶさ2」を操作していますが、いつも「リュウグウ」で作業しているような気持ちになります。皆さんに、「はやぶさ2」の挑戦を通して、宇宙の素晴らしさを体感してもらえたらと思っています。
プロフィル
つだ・ゆういち 1975年、広島県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。現・JAXA宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系准教授。米国ミシガン大学、コロラド大学ボルダー校客員研究員を歴任。JAXAでは小惑星探査機「はやぶさ」の運用に関わるとともに、ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」のサブプロジェクトマネジャーを務め、世界初の宇宙太陽帆船技術実現に貢献。2010年から小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトエンジニアとして開発を主導。2015年4月から、同プロジェクトマネジャーを務める。