【登山家・貫田宗男さん】果てることのない山の魅力、冒険心を持って挑み続け

――近年、中高年層の登山者が増えています

登山ブームはこれまでに3回ありました。最初は、日本人が初めて8000メートル級の一座であるマナスル(ヒマラヤ山脈)の登頂に成功した1950年代です。第二が90年前後に始まった日本百名山と中高年の登山ブーム。そして三番目が、若い女性を中心に広がり、ファッショナブルなアウトドア用の服装を身に着けて山に登る「山ガール」という言葉が登場する2008、9年ごろです。日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ!」で、私がコーディネーターを務めるイモトアヤコさん率いる「イッテQ登山部」も、このブームに乗ったものです。最近では、定年退職した団塊の世代にも人気があるようです。

中高年の登山者の増加に伴い、登山中の突然死が目立つようになりました。特に心筋梗塞の割合が増えています。山登りでは、平地の歩行以上に血圧が上がるため、健康な人でも高血圧状態になります。

通常の健康診断では潜在的な異常が発見されないことも多いので、日本登山医学会の登山者検診ネットワークが指定する病院で、高齢の方は毎年1回は登山者検診を受け、潜在する疾患やリスクを早期に見つけ、対処することをお勧めします。

低体温症も非常に怖い病気の一つです。人間の体は、体温が下がると強い疲労感を感じるようになり、思考力や記憶力が低下して、体が震え始めます。さらに体温が下がり続けると思うように体が動かなくなります。ついには震えすら起こらなくなって意識障害を起こし、命に危険が及ぶのです。低体温症は、発症すると焚(た)き火や服を着込むなどして暖めても回復せず、命に危険が及びます。病院で治療を受けなければ治りませんので、適切な対策が必要です。

【次ページ:体力強化と登山道具の選び方】