カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~(1) 写真・マンガ・文 平田江津子
自閉症の息子・カズキを授かって
息子・カズキは「自閉スペクトラム症、知的発達症」と医者から診断されています。その特徴を調べてみると、周囲とのコミュニケーション困難、言語発達の遅れ、興味の対象が限定的、強いこだわりを示す、変化が苦手などなど……たくさんの項目があります。「二つ当てはまれば自閉症の疑い」とありますが、カズキの場合は当てはまらないものが二つくらいしかない、というほどコテコテの“自閉君”です。
遊びやこだわりは変化し続けています。幼児から小学生の頃は、ジムボールに乗りながら特定の音楽をイヤホンで繰り返し聴くことが日常で、テレビはもっぱら「トムとジェリー」の倍速鑑賞。紙を切ったり折ったりして眺めるのは、現在も続いています。また、親の目を盗むのは天才的で、思い出してもイラッとするのは「掃除機事件」。カズキは、二階の階段から掃除機をガタガタと落として壊した数日後、今度は新しく購入したものを水のはったバスタブにザブーン! と投入したのです。何をしでかすか分からないため、彼が高校生になるくらいまで、うっかり昼寝などできませんでした。
そんなカズキは、2004年11月20日、元気な産声をあげました。大きな目が輝きを放ち、まるで後光がさしているかのようなキラキラした赤ちゃんで、抱っこしたまま離したくないという気持ちにさせるほどでした。一人遊びが上手で泣くことも少ない、育てやすい赤ちゃん。しかし、歩き始めるのと同時に目が離せない多動児となりました。
私にくっついて離れない長女、生まれて間もない二女を脇に抱えながら、一歩外に出ると手をつないでいないと道路に飛び出してしまうようなカズキを追いかけ回す……。目が回るほどの育児奮闘ライフでした。
加えて、話しかけても目が合わず、発語もなく意思疎通がほとんどできなかったカズキに対し、「もしかしたら……」という不安を抱き始めました。2歳の時、乳幼児健診で再検査を受けるようにと言われ、地元の医科大学病院でありとあらゆる検査をしてもらった結果、「小児自閉性障害」という診断が下りました。
覚悟はしてはいたものの、ショックで「頭が真っ白になる」という感覚は今でも脳裏に焼き付いています。
あの時の私を救ったのは、「とにかくできることをやるしかないね!」と前向きな言葉をかけてくれた夫と、物心ついた時から立正佼成会の信仰とともに歩む中で学んだ法華経の「法師品」でした。人は安心感で歩み出せるものなんだと、私は身をもって知りました。
プロフィル
ひらた・えつこ 1973年、北海道生まれ。1男3女の母。立正佼成会旭川教会教務部長。障害のある子もない子も同じ場で学ぶインクルーシブ教育の普及を目指す地元の市民団体で、同団体代表である夫と二人三脚で取り組みを進めている。