立正佼成会 庭野日鑛会長 6月の法話から

自己の尊厳に気づこう

私たちは、大自然から、宇宙から生まれてきた一人ひとりです。それはまた、神仏から生まれてきたと言っても、差し支(つか)えないわけです。ですから、私たちは人間同士、お互いに尊ぶ、尊敬し合う、尊重し合うことが、一番大事な心がけであると教えて頂いています。

そして、自らを敬う、自らを愛する、そういう心がみんなにあるのだそうです。とかく私たちは、自分を卑下(ひげ)して、「自分なんかたいしたことない」と思いがちです。自らを敬(けい)する、敬う、自らを愛する、そういう心がしっかりとつかめないと、他の人を敬うとか、愛するという心もなかなか出てきません。自己の尊厳を知って初めて、他の尊さ、他の人の尊厳を知ることができるのです。

そのことにしっかりと気づかなければならないと思います。
(6月15日)

画・茨木 祥之

煩悩があるからこそ

大乗仏教はとてもすごいことを教えてくださっています。その一つに「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」という言葉があります。「煩悩」とは悟りを妨げる働きを言うわけですが、それが「即」、そのまま「菩提」であると言っているのです。

私たちは煩悩があるからこそ、それを何とかしたい、悟りたいという気持ちが起こるわけです。人間にはみんな、煩悩と早く悟りたいという心が、共に具(そな)わっているということです。

私たちは、煩悩が強いとか、いろいろと自分を卑下することが多いのですが、その煩悩が悟りを得る縁となり、煩悩を何とかしたいという心が働くわけです。

「煩悩即菩提」という言葉をよく味わって、日頃の精進をさせて頂くことが大切ではないかと思います。
(6月15日)

宇宙に生かされて

明治時代に副島種臣(そえじま・たねおみ)という方がおられました。この方は、明治天皇さまに学問を講じる侍講(じこう)というお役を果たされた方です。こういう歌を残されています。

「あやにあやにかしこくもあるか天地(あめつち)の御稜威(みいつ)の中に立ちたるわれは」

今、この歌を詠(よ)んでいる私が、大宇宙の威光のただ中に生きているということは、なんと不思議で畏(おそ)れ多いことではないか――こういう意味が込められた歌だそうです。

私たちは、こうした歌を味わいながら、日々の精進に役立てていくことが大事ではないかと思っています。
(6月15日)