立正佼成会 庭野日鑛会長 2月の法話から
煩悩と菩提
私たちには「貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)」――貪(むさぼ)り、怒り、愚かさといった煩悩があります。しかし、煩悩があるからこそ、悟りを求めて、仏さまのようになりたいという心が起こるわけです。煩悩がなければ、悟りたいという心、人と一つになって仲良くしていきたいという心も起こらないのです。
ですから「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」と言われているように、煩悩があることは、決して悪いことではありません。煩悩がない人は悟りもないということです。私たちは物事を二つに分けないで、一つにして考えてみると、煩悩があるおかげで、私たちはご法に巡り遇(あ)うことができた、ご法を頂くことができたと言えるわけです。
道元禅師は、私たちのいのちについて、「この生死(しょうじ)は、すなわち仏の御(おん)いのちなり」とおっしゃっています。煩悩や生死、すなわち迷いを持っている私たちそのものが、仏の御いのちを頂いているのだということです。
よく考えてみますと、お釈迦さまも迷われて、何とかしたいと精進をされ、悟りを開かれました。お釈迦さまも私たちも全く同じであったということです。こういうことを教えて頂きますと、私たちも何か元気が湧いてきます。お互いさまに「仏の御いのち」を頂いている人間として、精進していきましょう。
(2月1日)
健やかな体と康き心
「健康」という言葉は、「健体康心(けんたいこうしん)」ともいわれます。「健やかな体」「康(やす)き心」ということです。こうした体と心を持つ人が本当の健康体であるとの意味が、「健康」という言葉の中に含まれています。
ですから、私たちが本当に健康になれるかどうかは、仏さまの教えをしっかりと自分のものにすることができるかどうかにかかっているのです。
(2月1日)
一日一日を大切に生きよう
私たちは『法華経』という「久遠の法」「久遠のダルマ」を頂いています。このご法は「永遠のダルマ」ですから、千年、二千年経っても変わらないものです。お釈迦さまがお説きになられましたが、その前からあった教えをお釈迦さまが発見したということです。
永遠に存在する「久遠の法」を私たちはすでに頂いています。そうしたものを頂いて、いかにこの人生を充実させるか、また、自分の人生を充実させるだけでなく、世の中をいかに良くしていくか、平和にしていくかをいつも考えているのだと思います。
よく「いま」が大事だといわれます。「いま」を抜きにして一生はないということです。現在、「人生百年」ともいわれますが、「いま」を大事にしなければ、その百年も無駄になってしまいます。しかし、「いま」を大事にすると言っても、どうしたらいいか分かりません。やはり、現実的な意味では、一日を単位にして、一日をどう充実させて生きるかが一番手堅い生き方だと思います。
「一大事(いちだいじ)と申(もう)すは、今日(こんにち)只今(ただいま)の心なり」という、正受老人(しょうじゅろうじん、道鏡慧端=どうきょうえたん=禅師)の言葉があります。この方は、一日(いちにち)を大事にしようということで、「一日(ひとひ)暮(ぐ)らし」と言われました。
「一日暮らし」には、真剣に一日一日を生きていこうという意味があります。一日一日を大事にしていくことを通して、現在、私たちの住む地球、環境問題を考え、また、人間がいつまでもこの地球上で生きていけるように、みんなが健康で生きていけるようにするにはどうしたらいいかと考えながら生きていくことが大切です。
久遠の法を頂いた私たちは、千年とか二千年とか、そうした長い年月を見据えて、世の中を良くしていく、あるいは地球を良くしていくために、今日(きょう)一日をどう生きていけばよいかを真剣に考えていかなければならないのです。
(2月15日)
心があるのは、宇宙のおかげ
人間は、何億年という長い長い生物的、動物的生活の果てに「心」を持つようになって、人間らしくなりました。それから50万年が経つといわれています。そして、人間が文明というものをつくり出してから、精神とか道(どう、みち)を開くようになってきたのです。これを一言でいうと、人間が心を持つようになったということです。
人間が心を持ち、発達させることができたのは、いわば天地、自然、宇宙が、何億年、何千万年、何千年かかってなしたことです。人間以外の他の動物、生物は心を持っていません。断言はできませんが、人間のようには持っていないと思われます。ですから、心を開く、心を養う、心を磨くということは、まぎれもなく尊く、宇宙的な問題であると言われるのです。
長い年月がかかって現在、宇宙のことまで考える心を持った人間が存在します。心によって、健全な地球を保ち、人間のみならず動物も植物も、あらゆるものが健康で生きていける環境をつくっていくことが、お互いさまの幸せにつながっていくのです。
(2月15日)