バチカンから見た世界(153) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

教皇ヨハネ・パウロ二世が1996年に定めた、「教皇空位と選挙に関する使徒憲章」には、有権者枢機卿が「新教皇の選出に関する投票、交渉、決議(プロセス)に関する事項を、誰に対しても、直接、間接的に明かしてはいけない」とある。その機密を守る義務は「新教皇の選出後も続く」と定めているが、教皇は自叙伝の中で、2013年の教皇選挙で自身が候補になっていることを感知し、その選出プロセスと選出直後の体験を明かした。

教皇が選挙中の機密を打ち明けても、「バチカン市国基本法」(憲法)の第1条に「教皇は立法、行政、司法の三権を掌握する君主」と定められており、法的に追及されない。さらに、教皇はバチカンの機構や制度の透明性を促進する改革をリードしており、選挙制度の改正をも検討していると報道された。