バチカンから見た世界(133) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
このように、欧米キリスト教文明を批判してロシア文明の純粋性と優越性を主張しているが、ロシアの軍隊は、昨年の侵攻開始以来、ウクライナ国内の500に及ぶ教会や宗教施設を攻撃し、破壊してきた。プーチン大統領の年次教書演説に対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、「(昨年の)2月24日、私たち数百万人(のウクライナ国民)は、一つの選択をした。白旗ではなく、青と黄色の旗(ウクライナ国旗)を掲げる選択だ。耐え、闘う選択だ。その選択は、苦しみ、悲しみ、確信と結束の証しでもあった。この一年間、私たちは敗北しなかった。2023年が私たちの勝利の年であることをわれわれは知っている」とメッセージを発して応えた。
「汎ウクライナ教会協議会と諸宗教組織」は同日、国内の全教会と諸宗教の礼拝所で行う「24時間の断食、祈り、布施」を提唱し、ゼレンスキー大統領を支えた。ウクライナの宗教者たちが公表した声明文は、「ロシアの侵攻が開始された当時、キーウ(キエフ)は3日間で陥落する」と言われ、軍事力に大きな差があったが、ウクライナが今でも抗戦を続けていることは、国民の強い祈りに対する「神の介入」(奇跡)があったからだと記している。
これに先立つ23日、世界193カ国が出席する国連総会では、ロシアのウクライナ侵攻を協議する緊急特別会合で、以下の四つの柱を中心とする決議案を141カ国の賛成を得て採択した。中国とインドを含む32カ国が棄権、北朝鮮やシリアなどの7カ国が反対した。
・国際法によって認知されている国境内におけるウクライナの主権、独立、一致と領土の保全を尊重する努力
・停戦と、ロシア軍のウクライナからの即刻、完全、無条件の撤退
・国際法の精神に沿い、ウクライナ領で犯された重大な犯罪に関する責任の訴追を保障する必要性