バチカンから見た世界(66) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
韓国カトリック教会の夢と現実――老齢化する離散家族
8月4日付のバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は、トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長からの親書を受け取り、ツイッターで「素晴らしい親書に感謝」との言葉を寄せ、「早期の再会を願った」と報じた。
ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は2日、両指導者間で続けられている親書の交換は、「シンガポールでの米朝首脳会談によって始まったプロセスを進展させ、共同声明での約束を実現させるためのものである」とコメント。朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨が北朝鮮から米国に約束通り返還されたことについても、トランプ大統領は金委員長に感謝の意を表したとのことだ。
バチカン日刊紙は、「金委員長からの親書の内容と金委員長の訪米については明らかにされていない」と報じた。だが、外交辞令上の進展はあっても、朝鮮半島の非核化と和解に向けた具体的プロセスについては、いまだ見えてこない。
世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談直後に発表した声明文の中で、「両首脳によって署名された共同声明が行動に移されていくという困難な作業は今、始まったばかりである」との認識を表明。「われわれは、両首脳が平和に向けた対話の道をたどり、過去の対立に戻る衝動に駆られないよう求める」と要請。その上で「WCCは、米国、北朝鮮、韓国のキリスト教諸教会を通して、3国の国民間に信頼と相互理解の橋を構築していく」との考えを示していた。
WCCが、米朝間の和平構築を「新しい章への長期的な努力」として見ているのに対し、韓国カトリック教会の指導者たちは、朝鮮半島における和解への第一歩として、「南北離散家族」の再会を挙げる。大田(テジョン)教区のユ・フンシク司教は、8月20日と26日に予定されている南北100家族の再会を前に、朝鮮半島における和解は、「われわれを分離することからではなく、われわれに共通する具体的で小さなことから始められなければならない」とし、「南北離散家族の問題の解決が最も緊急で最も重要だ」と指摘している。