バチカンから見た世界(66) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

さらに、「朝鮮戦争で、1000万人の家族が離れ離れになり、戦争は65年前の1953年に終わったのに、分断されたままで兄弟姉妹や両親たちは老い、死ぬ前に離散した家族との再会を望んでいる」とユ司教。「これまでに離散家族者の再会の機会は何度かあったが、南北間の不安定な関係が面会を継続する機会を阻んできた」と、この“切羽詰まった問題”への対応が急務であることを訴えている。

南北に分かれた離散家族の面会は、2015年を最後にこれまで行われていない。韓国政府の統計によれば現在、同国には5万7920人の離散家族者が生存しており、彼らの86.2%が70歳を超えているという。2000年以降、離散家族者の再会は、20回にわたり企画され、約2万人が参加したが、それは、全体の15%にすぎないとのことだ。年老いていく南北の離散家族たちは、スポーツなどによって健康管理を図り、生きているうちに再会の日が来るのを待っているとも報じられている。

京畿道(キョンギド)議政府(ウィジョンブ)教区のイ・ギホン司教(カトリック)は、朝鮮戦争の勃発によって4歳の時、姉妹を北へ残し、母と共に南へ逃れた。先の南北首脳会談、米朝首脳会談を受けて、「全ての朝鮮半島の住民が望んでいた平和が始まった。昨年の冬までは、想像もできないことだった。私は、希望している。神が私たちの祈りを聞き入れてくださったと確信している」と言う。司教もまた、「離散家族の再会が絶対的な優先課題」との考えだ。