バチカンから見た世界(60) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事も16日、イスラエル軍によるパレスチナ人デモの鎮圧を「暴力、流血行為」として非難し、「国際社会によって糾弾され、国際機関の捜査対象とされるべき」との声明文を公表した。トゥヴェイト総幹事は、「デモ抗議者たちはパレスチナ人として、米国大使館のエルサレム移転への反対と自らの置かれている状況に対する絶望を表明しているが、それは市民権の行使に他ならない」との見解を明らかにしている。また、「エルサレムは、3宗教によって分かち合われた聖都」と定義し、「聖地の包括的で持続性ある和平は、国際的に認知された国境線を尊重する2国家原則に基づくべき」と主張。「米国による“分割できない(イスラエルの首都としての)エルサレム”への大使館移転という一方的決断」を「国連の重要な諸決議に反対する行為」として非難し、「その行為が、全ての平和的で正しい解決策にとって憂慮すべき障害となる」と糾弾した。

ガザ地区唯一のカトリック教会の主任司祭を務めるマリオ・ダシルバ神父は、「ここ1週間のうちに戦争が勃発するかもしれない」と恐れながら、パレスチナ人たちは、米国大使館の移転問題だけでなく、「ガザ地区の悲劇的な状況にも抗議している」と言う。「飲料水も、電気も、職も無い。住民の44%が失業しているが、職を求めて地区を出ていく自由もない。自治体が公務員に給料を払えず、悲惨さは増大するばかり」。だから、「この状況に疲れ果てた住民たちが、抗議運動を展開しているのだ」と、ダシルバ神父は住民の絶望を代弁する。

聖都エルサレム問題に関して、イスラーム圏での主導をもくろむトルコのエルドアン大統領は14日、イスラエル軍によるデモ鎮圧を「ジェノサイド」(集団虐殺)と呼んだ。イスラエルを「人種差別国家」と非難、「イスラエルのネタニヤフ首相の手は、パレスチナ人の血に染まっている」と糾弾し、駐トルコイスラエル大使に一時国外退去を命じた。