『利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割』(35) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

戦争の危機で始まった令和2年

本来は、令和はじめの新年にあたって平和を寿(ことほ)ぎたいところである。しかし1月3日、アメリカがイランのソレイマニ司令官をイラクで殺害したというニュースを目にして、私はお屠蘇(とそ)気分が一気に冷めてしまった。報復の応酬がエスカレートすれば、大戦争になりかねないと憂えたからである。

幸い、イランのアメリカ軍イラク基地攻撃は、米兵の犠牲を避けた点で抑制が効いており、アメリカも軍事的反撃をしなかった。とはいえ、緊張状態は続く。それにもかかわらず、わが国は調査・研究という名目で、国会で議論せずに自衛隊を中東に派遣しようとしている。

首相は年頭所感で、戦後の1964年の東京五輪に言及しつつ、「東京オリンピック・パラリンピックの年」ゆえに現在は「未来への躍動感があふれている」と述べた。でも、戦前の1940年の東京五輪中止も思い出した方がいいかもしれない。当時は日中戦争の開始により、日本は開催を断念せざるを得なくなったのだ。

今、国内では「桜を見る会」や、カジノをめぐる政治家逮捕や捜査が話題になっており、五輪招致や司法などにおける不正の疑いが国際的にも報じられて、世界が日本を見る目は厳しくなりつつある。平和の祭典たるべき五輪の開催国にふさわしくなるように、政治の徳義を回復して戦争を回避し、世界の共生と平和に寄与することができるか否かが、今年の日本に問われている。

異常気象

平成の時代から近代西洋文明の転換期に入り、さまざまな変化が起こっていると以前に述べた。それを証左するように、世界にせよ日本にせよ、以前ならありえないことが次々に起こっている。

最たるものが世界的な異常気象である。その主たる原因は二酸化炭素の増加による地球温暖化だ。日本でも昨年は酷暑で、台風が次々と襲来し各地で深刻な水害が起きた。オーストラリアでは昨年9月に高温や乾燥による大森林火災が発生して今でも燃え続け、万単位のコアラを含む約5億匹もの動物が犠牲になってしまったという。

世界的に温暖化対策が焦眉の急になっており、昨年12月にはCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)がスペイン・マドリードで開催されたが、残念ながら実施ルール作成についての合意には至らなかった。スウェーデンの少女グレタさんの発言が世界的に注目された一方で、かつて京都議定書で世界をリードした日本は、自国の目標を引き上げることも脱石油も言明せず、世界の失望を買ってしまった。

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