『望めど、欲せず――ビジネスパーソンの心得帖』(7) 文・小倉広(経営コンサルタント)
心身一如
健康管理はビジネスパーソンの基本です。それは、なぜでしょうか。若い頃の私は「会社を休まないため」「倒れないため」と考えていました。しかし、今は違います。「仕事の品質を高めるため」には体調管理が必須である、と気づいたのです。
例えば、寝不足の時、疲れが取れない時、だるい時、私が書く文章の質はとたんに下がり、ネガティブになり、キレがなくなります。同様に、もう一つの私の仕事である講演において、歯切れが明確に悪くなってしまいます。これはビジネスパーソンにとって致命傷です。しかし、この品質低下に気づいたのは、今の仕事を始めてから。以前のような会社員として、事務仕事や、営業をしている時は、体調によりこれほど仕事に格差が生まれることに気づかなかったのです。しかし、恐らく体調に品質がリンクしていたはず。若さでごまかしていただけのような気がします。
「心身一如」という言葉があります。まさに、心が体に表れ、同時にまた体が心に表れる。心と体は一つなのであります。
健康の基本は、食事、睡眠、運動です。そして、ストレスをためないよう、心のあり方を整える。私は、そのいずれもが極めて重要であると考え、40歳くらいから少しずつ生活を変えてきました。
食事は、現在一日2食。ついつい、食べ過ぎてしまう私は、朝と夜だけを食べ、昼を抜いてバランスを取っています。その代わり、必須栄養素のうち最も大切なタンパク質を補給すべく、一日3回プロテインを飲んでいます。また、タンパク質の消化に欠かせないビタミンBを筆頭に各種ビタミン、ミネラルをサプリで補給。また、腸内フローラを整えるために、乳酸菌サプリと乳酸菌飲料を5種類ほど摂取しています。メニューは糖質制限食です。肉、魚などのタンパク質と野菜などのビタミンを中心にし、ご飯、パン、パスタは週に一度くらいしか食べないようにしています。とても調子が良く、肌もつやつやで気持ち良く仕事に集中できています。
睡眠は最低7時間、できれば8時間は眠るようにしています。そのために、飲み会は毎回1時間で途中退出し、夜10時にはベッドに入るようにしています。睡眠=寿命です。睡眠が6時間台になると調子が悪くなり、5時間を切ると明らかに品質が落ちていくからです。私は睡眠を取ることを優先してスケジュールを立てるようにしているくらいです。
運動はわずかですが、毎朝、犬の散歩を兼ねて鎌倉の海辺をジョギングしています。運動は痩せるためにするのではありません。運動すると明らかに考え方が前向きになるのです。運動をしないでいると、ついクヨクヨとネガティブに考えるようになる。これは明らかです。心を前向きにして、良い仕事をするために私は走っています。
心身一如。健康管理は、寿命管理であり、仕事の品質管理であり、人生の品質管理でもあります。ぜひ心がけたいものです。
プロフィル
おぐら・ひろし 小倉広事務所代表取締役。経営コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラーであり、現在、一般社団法人「人間塾」塾長も務める。青山学院大学卒業後、リクルートに入社し、その後、ソースネクスト常務などを経て現職。コンサルタントとしての長年の経験を基に、「コンセンサスビルディング」の技術を確立した。また、悩み深きビジネスパーソンを支えるメッセージをさまざまなメディアを通じて発信し続けている。『33歳からのルール』(明日香出版社)、『比べない生き方』(KKベストセラーズ)など多くの著書があり、近著に『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる 100の言葉』(ダイヤモンド社)。