【特別インタビュー 第43回庭野平和賞受賞者 ベンキ・ピヤコ師】『誰もが地球の守り人となるように』 自然と人とのつながりを築く

インタビューは、普門メディアセンターで行われた
「第43回庭野平和賞」を受賞したベンキ・ピヤコ師は、ブラジル・アマゾンに暮らす先住民アシャニンカ族の精神的指導者で、環境活動家でもある。アマゾンの熱帯雨林が農作物の大規模栽培や牧畜のために切り開かれ、生態系を破壊している現状に警鐘を鳴らし、これまでに300万本以上の植樹を行ってきた。今回、『誰もが地球の守り人となるように』をテーマに、ピヤコ師の信念や取り組みについて聞いた。聞き手は、公益財団法人・庭野平和財団の庭野浩士理事長(選名・統弘)。(文中敬称略)
森林から学ぶいのちの循環
庭野 アマゾンの熱帯雨林は、ここ数十年で大幅に減少し、それが地球温暖化など気候変動の問題にもつながっています。森林減少の影響をどのように感じていますか。
ピヤコ 農地や放牧地への転用を目的とした森林伐採は、長らく私たち先住民の暮らしを脅かしてきました。私たちの土地、文化、言語、多くの人命が失われてきたことを非常に悲しく思っています。同時に、森林伐採がアマゾンの豊かな生態系に及ぼす影響は計り知れません。私たちが暮らす地域を流れる川には2、3年前までたくさんの魚がいました。しかしその後、森林が焼き払われると、煙や灰が川に流れ込んで川の水に含まれた酸素が減り、多くの魚が死に絶えました。森林が切り開かれるたび、付近の川でこのように一度に大量の魚の命が奪われています。
私はアマゾンの熱帯雨林を“人類が呼吸するために重要な場所”と捉えています。世界最大の酸素の発生源の一つであり、また、産業などで汚染された空気を浄化する作用を持つからです。森林が失われれば、温暖化や大気汚染といった環境問題が加速します。
今、温暖化の影響で南極の氷河が解け始めています。もし全て解けてしまったら、日本を含むアジア大陸の多くは海に沈むでしょう。そうなった時、恐らく生き残りをかけた戦争が起こると思うのです。あまたの動植物が歴史に消えていったように、人類もまた種の存続の危機に瀕(ひん)しています。
庭野 ピヤコ師は木を植え、荒廃した土地を再生する事業に取り組んでこられました。始められたきっかけは?
ピヤコ 私は子どもの頃から木を植え続けています。私たちアシャニンカ族にとって、それはごく当たり前のことで、祖父母や曾祖父母からいつも、「この地球ができた時、まず光ができ、そして私たちの楽園ができた。その時に使命が与えられた。それは、私たちの家を守ることだ」と教えられてきました。
子どもの頃、私はおじに連れられて森へ行き、そこで多くの時間を過ごしました。動物たちと話すためです。森にどれほど多様な動物がいて、彼らの生活に樹木がどれほど役立っているか――。森の生態系からは、本当に多くのことを学びました。
1本の木から、200~300種の動物が糧を得ます。その中でも鳥は、果実を食べ、残った種をさまざまな場所に落とし、自分たちで食糧を作っています。彼らはどの季節に何をすれば良いかをよく知っているのです。
また、動物は人間のように果実を独占することはありません。あらゆる動物がその恩恵を享受できるように種を蒔(ま)きます。私たち人間はそうした行動を見習わなければならないと思います。動物たちは私たちの先生なのです。
庭野 自分が恩恵を受けたものを無条件で自然界に返していくことが先祖からの教えなのですね。ピヤコ師が創立したヨレンカ・タソレンツィ研究所の活動の柱に、「アグロフォレストリー(森林農業)」の普及があります。これはどんなものですか。

ベンキ・ピヤコ師
ピヤコ 木を植え、森林を守りながらその中で農業や畜産業を行っていく方法です。先住民族の伝統を踏襲しつつ、科学的な知見も借りています。
アマゾンでは長らく、開発のために膨大な土地が切り開かれてきました。例えば、畜産の分野では、一頭の牛を育てるのに1ヘクタールの土地が必要です。5万頭なら、5万ヘクタールです。際限がありません。ですから私たちは、開墾せずに飼育できるアナグマやシカ、ブタなど、森にいる小動物を育てることで、人間の生きる環境を整えようとしています。
川にすむ魚は、私たち先住民が捕まえて食べるには量が不十分ですから、食用に魚の養殖も行っています。これまで養殖のために500以上の池を作り、そのほとりには、それ以上のコミュニティーが形成されました。人々は自らが作った池や森から糧を得られるようになったのです。
森林農業は国内だけでなく、イギリス、フランス、イタリア、メキシコ、アメリカ、ペルーに広がっています。多様な国の方々が私の研究所を訪れ、年単位で私と生活を共にし、種の回収の仕方や木の植え方、自然が私たち人間に何を与えてくれるかを学んでいきます。そして自国に戻り、荒廃した土地を再び森に戻す取り組みを進めています。世界中ですでに数千人が私と同じように取り組んでいます。






