【特別インタビュー 第43回庭野平和賞受賞者 ベンキ・ピヤコ師】『誰もが地球の守り人となるように』 自然と人とのつながりを築く
自然との共生が幸福を生む
庭野 なぜ、自然の中に生きることが大切なのでしょうか。
ピヤコ 今、この地球上で人々が経験しているのは、あまりにも大きな心理的混乱です。多くの人が自分の住む場所、食べる物、飲む物、兄弟姉妹さえ信じられなくなっています。不安定な世界の中で、人々は自らの内に暴力性や恐れを抱え、自分が生まれた意味や起源さえ分からなくなっているのです。これが地球で起きている現実です。
一方で、今日でも世界の文明と全く接触を持たない民族がいます。彼らの文明、つまり、森の中での生き方では、木々や動物を愛することで一つの世界を形成しています。彼らは彼らの世界とつながり、脈々と受け継がれてきた自らの起源や創世を信じています。自らが得たものを大切にし、ただ存在すること自体を尊重しているのです。人類の歴史は私たちに語りかけます。“存在するだけで幸せだ”と。なぜなら、私たちの人生には限られた時間があるだけだからです。
私たちが求めるべきは、人間と自然とのつながりを築くことです。まずは土に触れ、土を感じ、水に触れ、水を感じ、木々を兄弟のように抱きしめてください。彼らが持つ全てを求めてください。それは、あなたの中に再び呼吸を取り戻すための営みです。花を摘み、花のシャワーを浴び、願かけをし、供物を捧げる――。こうした行いの全てが、あなたを幸福な人間へと導くでしょう。

庭野浩士理事長
庭野 信仰を持つことは大いなるいのちと一体になることだと、私たちは日頃、教えられています。ピヤコ師のお話からも改めてその気づきが大切だと感じた一方で、日常に振り回されてしまう弱い自分だと気づかされました。日本の都市部はコンクリートに囲まれ、じかに土に触れることさえありません。そうした環境に暮らす私たちが、平和で持続可能な未来を実現するために、どのような行動から始めればよいでしょうか。
ピヤコ 難しい質問ですね。1999年に私が初めてブラジルの首都ブラジリアに行き、果樹を植えようと働きかけたとき、政治家たちは全く取り合いませんでした。そのため私は町の若者たちを集め、彼らと森へ行きました。そこでたくさんの果実を採取して種から苗床を作り、政府の許可を取って3千本以上の苗木を、町の一角に植えました。3年後、ブラジリアの街は、そこから育った木々で緑に覆われました。それを事例として国内に植樹が広まり、これまでに200万本の木が街中に植えられたのです。その光景に私も驚きましたが、今では、道路際にたくさんの果実がなっています。実がなる季節、落ちた果実は腐って道路を汚すことはありません。人々が果実を拾って自宅に持ち帰り、冷蔵庫に入れるからです。
日本の都市部にも活用されていない土地はたくさんあるはずですから、さまざまなことが実現できるのではないでしょうか。
自ら植えた木が育ち、実をつけ、それを採って食べることは、人生の喜びにほかなりません。私はそのことをより多くの人に伝えたいと思っています。たとえ庭が小さくても、石やコンクリートの上でも、工夫すればタマネギが育ちます。世界中の人が毎日少しの時間を使って木を植えれば、それが私たちの呼吸だけでなく、毎日の食事を支える糧になるのです。私は先祖から受け継いできた精神を人々の心に植えていくことで、多くの人の人生を変えられると信じています。
プロフィル
ベンキ・ピヤコ 1974年、ブラジル・アクレ州に生まれる。2018年には、同州マレシャル・タウマトゥルゴ市にヨレンカ・タソレンツィ研究所を設立。先住民の人権擁護、自然の再生・保護、世界の意識改革を活動の柱に、消失の危機に瀕する先住民の母語や知識を継承するための学校設立などに尽力する。生物多様性の保全を目的に、今後10年で1000万本の植樹を目指している。





