「和解へ向かうゼレンスキー政権とバチカン」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

和解へ向かうゼレンスキー政権とバチカン

ゼレンスキー政権は、ウクライナ侵攻に関するバチカンの「中立的、あるいは、ロシア寄りの立場は容認できず、ウクライナはバチカンの和平調停を必要としていない」と発言し、教皇の主導するウクライナ和平に関する外交政策を批判してきた。だが、教皇特使のマテオ・ズッピ枢機卿によるウクライナ、ロシア、米国、中国訪問後、バチカンのウクライナ和平案に関するさまざまな発言や主張に、わずかながら(ウクライナ寄りの)変化が見受けられるようになった。こうした動きを察知してか、ゼレンスキー大統領のバチカンに対する評価が肯定的なものとなりつつある。

同大統領は10月4日、イタリアのテレビ局「SKY」が放映したインタビュー番組の中で、「私自身が、(ローマ)教皇フランシスコをウクライナに招待している」と述べた。“私自身が”と強調した教皇に対する呼びかけだった。

さらに、「私たち(ウクライナとバチカン)は、人道問題、特に、ロシアによってウクライナからロシアに強制搬送(拉致)されている子供たちの帰還という、重要な問題に焦点を当てて協力していかなければならない。この視点から、教皇、バチカンの支持と支援が得られるなら非常にうれしい」とも発言。バチカン外交が推進する「人道支援を中核とした和平交渉への道ならし」を受け入れる意思表示をした。

また、「戦争によって妻や子供たちに会えないことが寂しい」と内心を吐露し、離散させられている多くのウクライナ国民の家庭に思いを馳せた。そして、「私たちは、私たちの存亡をかけて、私たちの子供や未来のために戦っている。正義が私たちの側にあり、私たちの勝利を確信している。最後まで戦う」と決意を表明した。

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