六花の会「会員の集い」 矢場とん女将の鈴木氏をゲストに座談会

ゲストに矢場とん女将の鈴木氏を迎え、座談会が行われた(提供・六花の会事務局)

仏教精神を生かした経営を目指す立正佼成会会員有志によるネットワーク「六花(りっか)の会」による「会員の集い」が9月30日、法輪閣(東京・杉並区)で開催された。当日は、経営者、個人事業主の会員62人が会場に参集。109人がオンライン配信を通じて参加した。

当日は、名古屋名物みそかつを提供する「矢場とん」の女将(おかみ)・鈴木純子氏=名古屋教会=をゲストに、『素人女将が挑んだ、愛される店づくり』と題して座談会が行われた。同会の大畑昌義推進責任者=荒川教会渉外部長、川本桂子推進副責任者=小田原教会=が登壇。國富敬二同顧問(本会理事長)がファシリテーターを務めた。

座談会の中で鈴木氏は、矢場とん二代目社長との結婚を機に、家族経営だった同社の一員に加わった当時の様子を紹介。月末になると金策に走るほど脆弱(ぜいじゃく)な経営状況の中、サラリーマン家庭で生まれ育ったことで培われた自身の「普通」の感覚を基に、経理や配膳などあらゆる業務の改善点を指摘したものの、経営を主導する夫や大女将(義母)から「食べて行けるのだからこれでいい」と言われたことを明かし、「既存の方法が楽だからと変化を嫌って、よりよいものを追求する心が当時は足りなかった」と振り返った。

それでも、高校生だった長男(現社長)から事業継承の意志を打ち明けられたことで、「親として『継いでほしい』と言える店に」と心を決め、夫を説得して経営改革に着手。販売情報を記録する「POS(販売時点情報管理)レジ」を導入して売り上げ管理を徹底するなどして地道に経営の基礎を固めた。

また、客の目を引く真っ赤なのれんの採用、食器をプラスチック製から陶器製に替えて顧客満足度を上げるといった数々のアイデアを実現。さらに、自社の存在を広く世間に知ってもらおうと、同社を象徴する豚のマスコットキャラクター「ぶーちゃん」を制作して、自社ビルの外壁に描くといったブランド力の向上にも注力した。これにより、同社の知名度が向上するとともに、商業施設などからの出店依頼が寄せられるようになり、名古屋市を中心に全国30店舗を展開するまでの成長につながったことを説明した。

その上で、鈴木氏は、「一人で良い会社は作れない」と強調し、社会貢献活動を通じて社員の心を合わせる「まかない募金」の取り組みを紹介。まかない1食につき100円を献金し、その浄財でカンボジアに学校を建てるとともに、社員を現地に派遣して、利他の精神を育む機会にもしていると語った。

このほか、社員も経営者も、互いに仏性のある平等な存在だという意識を高めるため、主従関係をイメージする「従業員」の言葉を使わず、同じ企業で生きている家族という意味を込めて「社員」と呼ぶようにするなど、自身の経営の「こだわり」について語った。

この後、グループごとに感想発表を行い、質疑応答の時間が設けられた。